1-1 広瀬川の個性
広瀬川は都市を流れる清流です。その45.2kmの全流路・全流域は仙台市の 行政区域で完結しており、源流は関山峠のトンネル付近とされています。さらにその水源を求めるならば、東北地方の脊梁山脈を形成する奥羽山脈の船形山(標高1500.2m)、楠峰(1210.5m)、白髪山(1284.2m)、寒風山(1117.3m)、関山峠(920m)、面白山(1264.4m)まで遡っております。
広瀬川を植生から眺めれば、上流域、中流域、及び下流域に類型する事が出来ます。上流域はサワグルミ、トチノキなどが谷底の森林を構成し、林床にはオシダ科のリョウメンシダ・ジュウモンジシダ、キクザキイチゲ、ニリンソウ、コチャルメルソウなどが成育し、岩石が河床を構成しており、河川勾配が大きく、川幅は狭くなっています。中流域はシロヤナギ、オニグルミなどが森林を構成し、カタクリやヒメシャガの群落、ネコヤナギ群落、ツルヨシ群落が広く発達しています。河川勾配は上流部に比べて小さく、川床は砂礫で形成され、川幅も広くなり、洪水によって運ばれる土砂により寄州や中州が発達しています。下流域は中流域と同じようにシロヤナギやオニグルミが森林を構成していますが、中流域のツルヨシに代わり、ヨシが優占するヨシ群落が広く発達しています。河川勾配は緩くなるので川床は細砂や粘土質となっています。
このように、広瀬川流域は船形山山頂から河口に至る幅広い垂直分布を持つことから、上中流域の広葉樹林、下流域の湖沼の水生植物、河口部の海岸砂丘植物など、多様で豊かな植物相が見られるのです。
また、原生的な自然であり、水や生物全般のために大変重要な意味を持つブ ナ林は流域面積の22%を占め、仙台市内のブナ林の約7割が広瀬川流域に広がっています。
植物と同様に、広瀬川とその流域の生息動物も多種多様であり、魚類では32科72種が確認されています。北方系の魚と南方系の魚の分布は、仙台付近を境にしているという報告もあります。
また、日本固有種であり、清流にしか生息しないカジカガエル、天然記念物のニホンカモシカ、食物連鎖のピラミッドの頂点に位置するオオワシ・クマタカ・オオタカ・チョウゲンボウなどの猛禽類の生息は、まさに広瀬川流域の自然度の高さを象徴していると言えるでしょう。
景観の面では、昭和49(1974)年、仙台市によって制定された「広瀬川の清流 を守る条例」による環境保全区域指定により、河岸の緑が保全されています。上流域においては、不動ノ滝や鳳鳴四十八滝などの大小の滝の連なりが迫力に満ちた姿を見せ、下流域においては、河川敷を広大な耕地が占め、典型的な平地河川景観が広がっています。
広瀬川の中流域には、仙台市の中心部に当たる市街地が発達しました。そこからは、川が激しく屈曲し蛇行する様子や、瀬や淵、高く切り立った自然のままの崖など、特徴ある河川景観をあますところなく観察できます。広瀬川にかかる10ヶ所ほどの橋がビューポイントとなっていることと相俟って、このことが人々に広瀬川への感動と関心を生むきっかけを提供しています。