梅雨明けの後も雨は上がらず、しとしととまるで秋雨のように降り続いたこの夏。朝晩に通る宮沢橋からの広瀬川も、水かさがぐんと増している。下流を眺めながら、上流はどうだろうと考えた。長雨は、上流にはもっと激しい変化をもたらしているかもしれない。
上流といえば、すぐ思い浮かぶのが青葉区新川の名取政一さんだ。名取さんはご家族でJR奥新川駅前の食堂を営み、政一さんご自身は会社勤めのかたわらハイキングコースの整備を続けている。
2年前、名取さんの仕事ぶりを拝見する機会があった。そのとき知ったのは、上流では大雨や台風が続けばたちまち大木がなぎ倒され、川の斜面はごっそりと流れ落ちてしまうということだった。せせらぎはときに獰猛な生き物になって、牙をむき出しにするのだ。怪物の去った跡を、名取さんは鉈(なた)と鍬(くわ)と鋸(のこぎり)を背負って歩き、黙々と修復する。荒れた風景は、人の手が加わると、落ち着きと秩序と温かさを取り戻す。新川の渓谷に整備されたハイキングコース全体が、私には名取さんの思いのこもった表現であり、作品に見えた。
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