vol.14 作並こけしと作並温泉

第1回 作並こけしとは

今回の訪問地は、広瀬川の上流に位置する青葉区西部の作並。

【広瀬川散策マップ】

関山峠を隔てた向こう側が山形ということで、冬は寒さが厳しく雪深い地域です。2月の大雪では、雪崩により国道48号線が通行止めになるなど影響が出ましたが、私が訪れた日は穏やかな晴天に恵まれ、春を思わせるような柔らかい空気に包まれていました。

【平賀こけし店】

まず訪れたのが、広瀬川沿いに店を構える「平賀こけし店」。作並に伝わる「作並こけし」は、東北に11系統(うち、宮城は4系統)あるこけしの一つで、江戸時代末期から今日までに約150年もの歴史があるといいます。

この地で先祖代々、こけしを作り続けているのが平賀こけし店。店に入ると、8代目の平賀輝幸さんが私を迎えてくださいました。そして、平賀さんとともに出迎えてくれたのが、様々な顔・形をしたこけし達。ウインクをしたこけしや七福神のこけし、伊達政宗公をモチーフにしたこけしなど、実に豊富なバリエーションです。

【バリエーション豊富なこけし】

「伝統を大切にしながら、新しい作風にもチャレンジしています。作並こけしはもともと、小さな子どものおもちゃだったんですよ」

そう話しながら平賀さんが手に取ったのが、これまで私が見たことのない細長いこけしです。雪深い静かな湯治場で生まれた作並こけし。誕生した当時は、小さな子どもが手で握って遊べる程の細い形で、主な用途はおもちゃだったとか。それが現在では鑑賞用となり、形もやや太くなりました。表情が可憐で優しく、派手さは無くて素朴という点が作並こけしの特徴といいます。

【手に握れる細さのこけし】

【こけしを手に説明をする平賀さん】

可愛らしい作並こけしが出来上がるまでには、太くて長い1本の丸太から数多くの作業工程と愛情をかけて仕上げることを教えてもらいました。材料となるイタヤやミズキの皮をむき、小屋の中で1年くらい乾燥させます。ここで大敵になるのが「湿気」。湿度が高くなると木が黒く変色してしまうため、梅雨の時期は苦労させられるといいます。

乾燥が終わったら加工する作業へ。縦方向に回転する丸型の電動のこぎりで原木を切り落とし、旋盤という機械を使って木の余分な皮を切り取ります。その後、こけし専用のカンナで削って形を整え、サンドペーパーやわらで表面を磨き上げます。そして、絵付けをして完成という流れ。

【こけしの形を整える平賀さん】

平賀こけし店では絵付け作業の体験を行っていて、私もやってみることにしました。こけしに絵付けするのは初めての体験です。