vol.16 東北大学加齢医学研究所教授 川島隆太さん

いまや全国的に子供から高齢者までもが取組む「脳トレ」、その仕掛人としてお茶の間でも著名な東北大学の川島先生に、広瀬川をはじめとする豊かな自然環境に恵まれた仙台の魅力と、そうした環境を活かした子育てなどについてたっぷりと語っていただきました。子育て中のお父さんお母さん必見のインタビューです。


平成22年6月25日(金)13:00~14:00
場所:東北大学加齢医学研究所川島研究室
聞き手:佐藤幸輝(仙台市建設局広瀬川創生室)

第1回 青葉城恋唄がきっかけで仙台へ

●聞き手

ご出身は千葉県で、大学進学の際に、さとう宗幸さんの「青葉城恋唄」がきっかけで東北大学を志望されたと伺っています。当時、仙台にはどのようなイメージをお持ちでしたか。

●川島さん

私は大学受験で1年浪人しましたが、それまで仙台を意識したことはありませんでした。ところが、ちょうど受験する大学を決める頃、さとう宗幸さんの「青葉城恋唄」が大ヒットしていて、そこで初めて仙台の街を意識したんです。歌のイメージからすると街の中を川が流れていて、非常に風光明媚で住みやすそうな街だろうな、という幻想を抱きました。ぎりぎりまで京都大学へ行こうか、東北大学へ行こうか随分迷っていましたが、最終的には青葉城恋唄のイメージで仙台の街、東北大にしようと思い決めました。

<参考>仙台(青葉)城跡入口付近

●聞き手

今こうして川島先生の話を伺うことができるのも、青葉城恋唄のおかげですね。さて、仙台に住まわれてみて、実際にいかがでしたか。

●川島さん

自然との関わりという面では、部活動で河川敷で練習したり、芋煮会をしたりといった程度でしたので、学生の頃は、実はあまり良さが分かりませんでした。ところが卒業してすぐに子供ができて、そこで仙台の良さを意識するようになりました。仙台の街には山もある、海もある、そして川もある。子育てしていく中で、これ以上恵まれた環境ってそんなにないのではと強く感じました。

<参考>現在の広瀬川での部活動練習風景

●聞き手

先生は、卒業後研究で京都大学にも在籍されたと伺っています。

●川島さん

京都大学といっても、研究に行っていた霊長類研究所は京都ではなくて、愛知県にあるんです。やっぱり暑くて大変でした。私は千葉出身ですが、関東圏でも冬はあまり温度が下がらない。仙台の一番いいところは、四季がはっきりしているところだと思います。仙台は冬が寒くて、夏は暑いし、春夏秋冬の季節ごとにメリハリがありますね。

<参考>雪の広瀬川(広瀬橋から上流を望む)

●聞き手

そうした気候帯と自然に恵まれ、なおかつコンパクトな都市規模が仙台の住みやすさの要因としてあげられると思います。先生は研究で海外にもお住まいになっていたと伺っていますが。

●川島さん

スウェーデンに2年間いました。当時は子供が3人いて、皆連れて行きました。

●聞き手

自然環境の面では恵まれているイメージがあります。

●川島さん

仙台も自然環境がある方だと思いますが、自然が残っているのは、やはりヨーロッパ諸国ですね。ヨーロッパでは居住の場所である街に対して、共有財産である自然を保護するということを極めて意識的に行っています。特にスウェーデンでは、自然はみんなのものであると意識が非常に強く、面白いと思ったのは、庭になっている果実、例えばリンゴなんかは、誰が取って食べてもいいんです。その人の家のものではない。それは、国土は国民全員のものである、だからそこに生えている木になっている実は全員のものである。その人の庭にあろうと関係ない、というぐらい自然は共有財産だと認識されていて、それをしっかり保全していこうという意識がとても強いと感じました。そういう意味では、日本ではがっかりさせられることがありますね。

●聞き手

日本では個人の所有意識が強いですから。

●川島さん

そうですね。狭い土地の中で互いに「これは俺のだ」と主張し合っているような気がする。だから河川敷のような公共の土地は、オープンスペースとして使えて良いと思いますが。