第3回 広瀬康一君の由来は?
●聞き手
「ジョジョ」第四部には、語り部として「広瀬康一」君
というキャラクターが重要人物として登場します。
こうしたキャラクターに「広瀬」と名付けられた
先生の意図は、広瀬川を仙台のシンボルとして
考えられてのことなのでしょうか?

●荒木さん
やっぱり「広瀬川」を出さないわけには
いかないじゃないですか!
杜王町は仙台市ではないですが。
さとう宗幸さんの大ヒット曲もありますし、
広瀬康一君は仙台のシンボル・広瀬川から、
それしかないですよ。
●聞き手
ありがとうございます。
仙台市に住む「ジョジョ」ファンにとって、
とても嬉しい話です。
以前広瀬川沿いに「河童」の銅像を市民の寄付で建立しよう
という企画があったようですが、
「ジョジョ」ファンだったら広瀬康一君の銅像を
建てたいと思うでしょうね。
では、仙台を離れた今、懐かしく思う場所や、
今でもよく立ち寄る場所などはありますか?
●荒木さん
少年時代に遊んだ小松島の方には今でも行きますよ。
昔からあんまり変わっていないですよね。
与兵衛沼周辺も公園区域として自然が残されていたりして、
いいですね。
あと台原森林公園や東北薬科大学側の瞑想の松とか。


●聞き手
懐かしい場所を訪ねて足を運ばれるのでしょうか?
●荒木さん
本当によくあの辺で遊んでいたので。
そうですね、いいことも悪いことも
いろんな思い出があります。
●聞き手
「動物の足跡を追っていろいろ訪ね歩くのが
好きな少年時代だった」というお話も伺いました。

●荒木さん
先程の埋蔵金探しではないのですが、
いろんなものを追跡するのが好きで、今でも動物の足跡とか、
すごく興味があります。
●聞き手
今年は熊の餌となるナラの実が不作で、
人里までよく熊が降りてくるそうですが、熊の足跡なども…
●荒木さん
仙台でも熊が降りて来るんですか?
水溜りのそばとかに爪で引っ掻いた跡があると、
背筋がぞっとしますよ。
「ほんとに、ここに居るんだ、通ったんだ」って。
●聞き手
ところで、今年(注:2011年)でデビューから30周年と伺っています。
1987年の「ジョジョ」連載開始からは24年が経ち、
その間に日本を取り巻く社会情勢も
大きく変化したと思います。
連載で仙台を離れられてから、
昔と比べて現在の仙台をどうご覧になりますか。
●荒木さん
そうですね、昔の御屋敷のような建物が
無くなっちゃいましたね。
それと、いい喫茶店も無くなってしまって
ちょっと寂しいです。
街自体はきれいになって、住みやすくなったとは思いますが。
●聞き手
戦後の面影を残したミステリアスな雰囲気は、
市街地整備が進んでなくなってしまったかもしれません。
●荒木さん
でも、さっきタクシーの運転手さんが話されていましたが、
昨日雪が降る前に現れるというユキムシが
舞っていたそうですよ。
それも市内で出ていたそうですが、
そうした自然が身近に感じられることは
素晴らしいなと思います。
●聞き手
子供の頃の「どざえもん」が流れて来ていた時代や
高度経済成長期の公害問題などを経て、
自然環境を大切にしなければという意識の高まりから、
自然との共生が回復しつつあるという感じでしょうか。
●荒木さん
そう考えると仙台はこの街の規模がいいんですよね。
●聞き手
コンパクトでちょうど良い街のサイズなのかもしれません。
●荒木さん
そうですね。歩いて回るにしても、
電車やバスを使うにしても、ちょうど良い距離で
どこへ行くにしても移動しやすい。
●聞き手
車は運転なさらないのですか。
●荒木さん
なぜか・・・しなかったですね。
●聞き手
やはり、歩いて追跡したりするのがお好きということで。

●荒木さん
追跡は楽しいですね~(笑)
でも本当に仙台は住みやすい都市規模だと思いますよ。
東京だと広すぎて。
●聞き手
コミックスの折り返しのコメントで拝見したのですが、
先生が仙台で連載を始めた頃は、
コピーが一枚40円するなど、仙台に住みながら
連載するには大変だということで
東京に引越しされたそうですが。
●荒木さん
当時はまだ東北新幹線が開通していなくて、
東京まで電車で4時間はかかったんです。
宅配システムもやっとクロネコヤマトの宅急便が
できたくらいの時期で
週刊誌で連載するのは大変だったんで、
もう行かざるをえない状況でした。
●聞き手
今ではインターネットなど通信技術も普及し、
またこうした自然環境も身近にあり住みやすくなって、
逆に、今だったら仙台に住みながら連載してもいいな、
と思うこともありますか?
●荒木さん
ありますね。仙台に住みながら連載できたらいいですよね。
●聞き手
先ほどの伊坂幸太郎さんを始め、仙台にお住まいの
人気作家の方も多いようです。
●荒木さん
小説家の方はほぼ問題ないと思いますよ。
マンガもデジタルで描いていればインターネットがあれば
送れますけど、僕はそうではないので…。
誰かが生原稿を確実に編集部に届けないといけないんです。

●聞き手
「岸辺露伴」は杜王町で連載できても、先生が連載中に
仙台に住むことはやはり厳しいのでしょうか…
●荒木さん
仕事関係や友人関係といった生活基盤が今は東京にあるので、
難しいでしょうね…。
アシスタントさんたちも、東京に住んでますから。