夏篇 第4回 まるで「スイミー」たちのように

大竹

面白いものをお見せしましょう。こうして巣箱からはみ出している群れの前で手を振ってみてください。

マサ

振った手の動きに合わせてミツバチたちが体を震わせます。

大竹

スズメバチなどの天敵が近付いてくると、巣を守るために外にいる働きバチたちは一斉に羽を激しく動かすんです。きっと、小さな身体を大きく見せ、天敵を撃退する工夫なんでしょうね。番兵たちがスズメバチを撃退するだけでなく、働きバチたちもこうして巣箱を守っているんです。


この話を聞いた時、 私は小学生の頃に国語の教科書で習った「スイミー」を思い出しました。
小さなスイミーは、マグロに食べられることなく自由に海を泳げるようにと、みんなで集まって大きな魚のふりをして泳いで難を逃れます。
この話と似た光景に、小さな生き物なりに精いっぱい生きる知恵を目の前で見た感じがしました。

大竹

あ、またキイロスズメバチが来ましたね。

という次の瞬間には網でスズメバチを捕獲している大竹さん。一瞬の早業です。

マサ

あっという間に捕まえてしまいました。

大竹

慣れですね。
さすがにミツバチたちが一生懸命巣を守っているとはいえ、放っておくと相当な被害がでることもあります。
先ほどのキイロスズメバチはよく単独で襲撃してきて、ミツバチを1匹ずつ捕らえては、ハチ団子にして自分の巣へと運んで行くのでまだマシですが、
それより一回り大きなオオスズメバチの場合は、被害は甚大。
なにしろ1匹で数千匹ものミツバチを殺してしまう凶暴さで、数匹集まって襲われると群れが全滅してしまうこともあります。

大竹

ミツバチたちの活動があまりに活発のため、巣が大きくなりすぎて巣箱からはみ出てきてしまっているハチの群れもいます。

マサ

あらら…大丈夫なんですか?

大竹

本当はもっと大きな巣箱に移し替えるとかしなければいけなかったのですが。
もうここまでくると、このまま持たせるしかないですね。

マサ

オオスズメバチもここにはよく来ますか?

大竹

キイロスズメバチよりも少ないですが、来ます。見たいですか。

と言って持って来ていただいた謎のビン。

マサ

これは一体なんですか?

大竹

スズメバチ焼酎(笑)。
こうして捕まえたスズメバチを生きたまま焼酎に入れると、スズメバチは針から毒を出しながら死ぬので、焼酎にスズメバチのエキスが溶け込むんですね。

マサ

飲むんですか(笑)

大竹

もうすごく元気になるらしいですよ!!というのは冗談ですが、山でスズメバチに刺されたときに応急処置に使えるんです。
山歩きする方や猟師の方にこれを差し上げるとすごく喜ばれるんです。
でも、ちょっと飲んでみますか?

マサ

今日は遠慮しておきます(笑)。ところで、これ何年ものになりますか。

大竹

これで3年くらいかな?この大きいのがオオスズメで、一回り小さいのがキイロスズメです。
酒に漬かって少し縮んでいると思うので、生きているやつだともうちょっと大きいでしょうね。アゴをガチガチと鳴らしながら威嚇してきます。

マサ

こんなのが襲ってきたら怖いですね…