第4回 いよいよ実践!

村山さんに促されてブロー台に座ると、緊張感がさらにアップ。胸の鼓動が高まります。自分が作りたいグラスをイメージしながら待っていると…。

『では、行きますよ。新聞紙をしっかり右手に持って下さいね』
村山さんはそう言って、ガラスを巻き取ったパイプを窯から取り出し、私の方へと歩みを進めます。

いよいよ、新聞紙を乗せた右手の上に高温のガラスが!

かなりの覚悟をしていましたが、全くと言っていい程、熱さは感じませんでした。卵を手に乗せるような感覚で右手を軽く閉じ、村山さんが転がすパイプの動きに沿って、ガラスを新聞紙の上で転がしながら形を整えていきます。

次は、息を吹き込んで大きくする作業へ。どれくらい強く息を吹き込めばいいのか、最初は感覚が全く分からない状態。そうした不安と緊張のせいか肺活量が大幅にダウンし、思うように息を吹き込めません。悪戦苦闘しながら、自分の作りたい大きさへと膨らませていきます。

飴のように溶けたガラスは思うように整形するのが難しく、作業にあたっては非常に高い集中力が必要。村山さんはこうアドバイスしてくれました。

『気持ちが安定していないといい作品は作れません。作業の時は無心になります』
結局、雑念だらけではありましたが、村山さんらの手助けがあって何とかグラスの形になりました。

これで作業が終了というわけではありません。最後に「徐冷窯」という窯に入れ、ゆっくりと一晩かけて熱を冷ましていきます。急激に冷やすと割れやすくなるため、こうした手順が必要なのだそうです。徐冷窯へと入っていくグラスを我が子のように見送りながら、心地よい疲労感に浸っていました。

秋保に工房を構えて今年で16年目。
古代ガラスを分析して再現したり、サハラ砂漠の砂を 世界で初めてガラス化したりするなど、素材の研究・開発 に熱心に取り組んでいます。