『広瀬川に関する市民活動について』

●聞き手

仙台市には、広瀬川に関わる市民活動団体の「広瀬川市民会議」という組織がありますが、やはり会員がなかなか増えないという問題も抱えています。東北大学相撲部の監督に就任後、一時は部員二十数名までに増やされた内館さんから見て、会員拡大のためにはどんな方法が効果的だと思われますか。

●内館さん

東北大相撲部のことでいえば、以前は4人しか部員がいなくて、大学相撲のリーグではCクラスという最低ランク。実はそのCクラスの中でもビリでした。それが、部員数は一番多いときで20人超えて、今ではリーグ戦ではBクラス。それをキープして、強豪大学と戦い続けるところまで来たわけですね。市民会議も、とにかく人を増やさなきゃいけないと思いますね。私は、広瀬川を、それから広瀬川を活かしたまちづくりについて、具体的にアピールしていくことから始めるしかないと思いますね。
また、活動にもっと若い人を集めようとか、あるいはもっと一般の市民の中に入っていこうとするならば、活動に携わっている人達自身が、話し方からファッションまである程度魅力的に見えるような努力は必要だと思う。市民運動や市民のいろいろな活動に対するイメージって、一般的には地味で、頑固で、一途というイメージもあると思う。そうなると、自分達とはあまりにもかけ離れているように感じてしまい、近寄らないという人達が多いのではと思いますので。

●聞き手

なるほど。

●内館さん

広瀬川は、一度も見たことがない他県の人達でも、さとう宗幸さんの「青葉城恋歌」によって、すごくいいところだろうな、というイメージを持っていると思います。あの歌は、桑田佳祐さんが茅ヶ崎・湘南を愛するように、さとう宗幸さんがすごく仙台を愛しているということが滲んでいますよね。それがあんなに大ヒットしたということは、広瀬川にとってとても大きなことだったと思います。でも、そういうイメージを持って訪れた人達が実際に広瀬川を見た時に、「何だよ、これかよ」と思われてしまうと、もう二度と来ない。私は「杜の都」という言葉に仙台ほどふさわしいところは他にないのだから、大切なのは、やっぱり守るべきところと、変えるべきところの見極めをしっかりすることだと思います。もちろん、何でも守ればいい、何でも残せばいいといっていたら、暮らしが成り立たないだろうから、市民はもちろん、行政に携わる一人ひとりが、保守と変革をしっかり考え、その上で長はリーダーシップと決断力をもって、方向を決めていかないといけないと思います。

●聞き手

最後に広瀬川で活動しているみなさんにメッセージをお願いします。

●内館さん

東北大相撲部を例に出しますと、ともかく「具体的に」やることを心がけました。部員確保のために、相撲っていうのはいかに面白いスポーツで、ここで4年間やることがいかにあなたにとって将来ためになるか、利益になるか、ということを具体的に、一生懸命部員達と一緒になって説明してまわったことがあります。それじゃちょっとやってみようか、腹も減ったし、ちゃんこ食おうかってことで道場を覗いた学生がいたら、もうそこでがっちり捕まえて(笑)。そういう積み重ねでこの相撲部が強くなってきたわけです。それと東北学院大相撲部の励ましと刺激は大きかった。だから、広瀬川っていう川がね、どれぐらい素晴らしい川なのか。そして伊達政宗っていう男がどれくらい魅力的な武将だったのか。そして今の仙台の街は、京都や札幌、金沢などの他の魅力的な街と比べても、全く遜色無くいい街だということを、やっぱり具体的にアピールしていく必要があると思いますね。そうすると、そうだよね、それじゃあみんなで守んなきゃね、ということにつながると思います。そうやって仲間を増やし、時には他県と情報交換して励ましあったり、刺激を受けたりしていくことが、広瀬川や仙台を活気づける力になっていく気がしますね。

●聞き手

まさに、昨年平成21年10月には、東北4県にある「広瀬川」で活動している団体が集まり、各県の広瀬川とその流域の魅力を紹介しあう「広瀬川サミットIN東北」が開催されました。ですが、実際に活動している人達だけでなく、私たち市民一人ひとりも広瀬川や仙台のPRをしっかりしていかないといけないですね。

●内館さん

どうしたって、中にいると、有難みがなくなるんですよね。私、東北大に入るまではホヤ嫌いだったんです。ところが、仙台でホヤを食べたら、こんなに美味しいのかってびっくりしました。今まで東京で食べてたホヤは何だったんだろうってくらい。それでお店の女将さんに、「ホヤってこんなに美味しいもんなのね」と言ったら、「昔からホヤってこんな味だっちゃ」って言われました。仙台の人は当たり前だと思っているから、私が「違うわよ」って言ってもわかんない。それはとっても幸せなことですけど、これが当たり前になりすぎると、いろんなものを気付かずに失ってしまったり、失ってしまってもそれが平気になったり、あるいは他の地域のことが羨ましくなってしまったりということが起きてくると思うんです。仙台の良さがよく分かって、私はやっぱり東北大に入って本当に良かったと思いました。

●聞き手

今後とも広瀬川や仙台のPRをどうぞよろしくお願いします。今日はお忙しいところありがとうございました。