第8回 仙台出身者はいつまでも若い?!

●聞き手

「ジョジョ立ち」もそうですが、フィクションの世界に
とどまらず、作品の魅力が現実世界に侵食してきて
いるということだと思います。
また、2010年のNHK朝のテレビドラマ小説で
「ゲゲゲの女房」が大ヒットして、
モデルとなった水木しげる先生の故郷に
たくさんの観光客が押し寄せるようになったそうです。
テレビ放映前は、ファンの方が訪れるくらいだったのが、
放映後には人口の数倍の一般の観光客が訪れるように
なったそうで、経済効果としても大きな効果があったと。

●荒木さん

水木先生ご自身がもう素晴らしいですからね。

●聞き手

せっかくですから、今後は何か仙台市でも、
「『ジョジョ』の作者・荒木飛呂彦のルーツはここにあり」
みたいな企画などできたらと思います。

●荒木さん

いや、非常に光栄なんですが…恐縮してしまいます。

●聞き手

ご存じかと思いますが、仙台市は自然環境に恵まれて
いるものの、正直なところ全国からどっと人が
押し寄せる観光地というよりも、どちらかといえば
実際に暮らしてみて、
いいなぁと思う土地柄だと思います。

●荒木さん

そうですね。

●聞き手

ですから、仙台の良さをPRする上でやはり
「人」がカギになると思います。
仙台の良さを知っていただき、
実際に住んでみていただいて、
ああ、本当に素晴らしいですね、
と思っていただくためには、そこで暮らす人たち自身が
いいところだと実感していることは前提ですが、
その上で人と人とのつながりによって
魅力を発信していくことが大切だと思います。
「ジョジョ」ファン同士には非常に固い絆があると
思いますから、仙台市の地域振興、魅力の発信という
観点からもぜひ先生のご協力をいただければ、
と思っております。
「水木しげるロード」ならぬ
「荒木飛呂彦『ジョジョ』ロード」ですとか。

●荒木さん

本当に夢みたいな話ですね。
仙台市のために協力できることがあったら
これからも何かできればと思っています。

●聞き手

ありがとうございます。
生命科学研究者の瀬藤光利さんが、
アメリカの医学生物学誌「cell」の表紙用イラストを
先生にリクエストされたように、
リアルタイムで「ジョジョ」を読んで育った世代が、
作品から受けた影響をマンガ以外のフィールドでも
どんどん現す時代になってきたと感じます。
また、新たな若い読者も増えているようですし。

●荒木さん

すごく嬉しいですね。
これからも幅広い世代に渡って読んでいただけたら
いいですね・・・水木先生のように。

●聞き手

やはり長く連載されているからこそ、
そうした意味でも広くアピールできると思いますので
今後も末永いご活躍を願っております。

●荒木さん

水木先生はもうすぐ90歳になられますが、
それでもなお素晴らしいですよね。

●聞き手

以前先生は、週刊誌連載では非常に体力を消耗するので、
連載は50歳くらいが限界、というようなことを
おっしゃっていました。現在は月刊誌での連載となり、
週刊誌よりはいくらかご負担が減ったと思いますが、
今後はどのくらいまででしたら大丈夫と
感じられていますか。

●荒木さん

いや…こればっかりは、本当に分からないですね。
でも、あと10年は最低でもやりたいですね。

●聞き手

先生は1960年生まれと伺っていますが、
こうしてお話を伺っていながら、
正直に申し上げますがとてもそうは見えません。
噂では「ジョジョ」の登場人物たちと同じく
「波紋使い」ですとか、
奥様が波紋の使い手で、ご自宅で「波紋」を
浴びているとか…

<「ジョジョ」第二部 ジャンプコミックス第11巻>

●荒木さん

いや歳相応ですよ(笑)。
「波紋」じゃなくて…仙台の人は、
皆さん若いからだと思いますよ(笑)。

●聞き手

先生に限らず仙台出身者は若く見える人が多いと。

●荒木さん

こうした自然環境や気候とか、お米や食べ物とか…
そうした要素があるかも。

●聞き手

では先生もこのまま変わらず、あと私たち仙台市民も、
いつまでも若々しく「ジョジョ」を楽しむことが
できますね。

●荒木さん

でも、この仕事は本当に危ないんですよ。
油断できませんから。
手塚先生は60歳で亡くなられていますし。

●聞き手

創作にエネルギーを注ぎ込んでしまうから
なのでしょうか。

●荒木さん

どうしても無理してしまうのかもしれないですね。
若い時とは違ってもう徹夜できないのに、
描いているとやれると思ってしまうとか。

●聞き手

描いているとアドレナリンが出て
疲れを感じられなくなってしまったりするのでしょうか。

●荒木さん

集中していたら、あっという間に時間が飛びますから。
気づいたら何時間も同じ姿勢で描き続けていて、
腰がもう…(苦笑)。

●聞き手

まるでディアボロのスタンド「キングクリムゾン」
の攻撃にあったみたいに、時間が消し飛び、
腰の痛みだけが残る。
私たちも「波紋」が使えるのでしたら、
先生に生命エネルギーを送りたいですが(笑)。

<「ジョジョ」第五部 ジャンプコミックス第59巻>

●荒木さん

ありがとうございます。
いつでもエネルギーは欲しいですので(笑)。
でも今日は、皆さんから元気のエネルギーを
たくさんいただいた気がしますよ。