第5回 メッセージ

●聞き手

Rakeさんの楽曲は、聴く人を引っ張って行くというよりも、そっと後押しする印象を受けます。東日本大震災以降に、作り手として意識されている点はありますか?

●Rakeさん

実は目に見えないところで皆が少しずつ助け合って、今日という日があるという当たり前のことを震災の時により強く感じました。僕がアマチュアでストリート・ミュージシャンをやっていた頃は、周りはどんどん就職していくし、辛く感じる時期もありました。それでも今大好きな音楽を続けられているのは、たくさんの人に支えられているからだなと感じます。
そういったメッセージが音楽に出ているのだと思います。

●聞き手

1stアルバムのマスター盤が出来た日の午後に被災されたそうですが。

●Rakeさん

仙台の自宅でギターを抱えて次の曲を考えようとしていた時に被災しました。揺れが凄かったのですぐ外に出ました。最初は被害の規模も分からず、ラジオで聞いた情報を飲み込むのに時間がかかりました。

●聞き手

精神的なショックも大変なものであったと思いますが、“歌うことで頑張ろう”という道を選択された経緯をお願いします。

●Rakeさん

被災直後は勿論、毎日の生活が精一杯で歌うどころではありませんでした。
1ヶ月経ってようやくライフラインが戻った頃、それぞれの人が精一杯生きることを始めないと、復興のスタートラインに立てないと思いました。自分は今まで何をしていたのか振り返って、自分は大好きな音楽を続けてプロ・ミュージシャンになって、アルバムも出来上がったところだったとふと思い出して、精一杯歌うことでスタートラインに立つために歌い始めました。

●聞き手

被災後、最初に書かれた曲が『希望の歌』と伺っています。どういった状況で書かれたのでしょうか?

●Rakeさん

震災前は毎日ギターを弾いていたんですけど、震災から10日位は水や食糧の確保でギターを弾けなかったんです。ふと、ギターを弾いていないことに気付いて、家にあった小学校の頃から使っている古いギターを弾いたんです。
パニックになっていたので、その時の自分の気持ちを一旦落ち着かせるために、ギターを手にしました。
作品をつくろうとか、誰かに届けようというより、自分の整理できていない気持ちを吐き出して、自分を落ち着かせようとしてあの時目に映ったもの、出来事を綴ってできた曲なんです。

●聞き手

そう思うと、歌詞がダイレクトに心に響きますね。
力強い想いを静かに歌う『誓い』は昨年の東北六魂祭のテーマ曲でした。最後に、Rakeさんにとっての誓いをお願いします。

●Rakeさん

仙台に生まれ育ってきたので、仙台で歌うということは僕にとって当たり前のことなんですが、10年15年前であれば仙台に住んでプロ活動は難しかったかもしれません。また、震災の時には目に見える形でも色々な人に支えられ、助けていただきました。
この時代に仙台に生まれた事を感謝しながら、これからも地元仙台から音楽を届けていきたいと思います。

●聞き手

ありがとうございました。