自然体験を子育てに取り入れてみませんか?

カワラバン代表/菅原正徳

■はじめに
 自然体験が子どもの成長に及ぼす影響について、「自然体験の多い子どもの中には道徳観・正義感のある子どもが多い」(※1)や「小学生の頃に行った自然体験などの経験は、長期間経過しても、その後の成長に良い影響を与えている」(※2)という調査結果が出されています。

令和2年度 青少年の体験活動の推進に関する
調査研究 報告パンフレット(概要)の表紙

 仙台市では子どもたちに川での自然体験を通じて地域や川の環境について関心を高めてもらうことを目的に、平成19年から作並かっぱ祭り、令和2年からは広瀬川自然体験学習(令和3年度は中止)として、イベントを開催してきました。毎年好評で多くの申込みがあることから、川での自然体験へのニーズが高まっていることが伺えます。

 広瀬川自然体験学習に参加した(参加予定だった)子どもの保護者などにヒアリングをして、どのような理由から子育てに体験活動を取り入れているか伺いました。今後、子どもに川遊びをさせたいと考えている方の参考になればと思います。

作並かっぱ祭りでの川流れの様子

(※1)H17独立行政法人国立青少年教育振興機構「青少年の自然体験活動に関する実態調査」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/055/003.htm

(※2)令和2年度 青少年の体験活動の推進に関する調査研究 報告パンフレット(概要)
https://www.mext.go.jp/content/20210908-mxt_chisui01-100003338_1.pdf?fbclid=IwAR3CK_3QF7cUQZX_RtZNKMooHaaTU9E9WUH1pRyZ9l3f2vcltMJ5crmcDLg

■【広瀬川自然体験学習】に参加または申込みをした一番の理由について
 ライフジャケットなどの装備や場所などの安全性を確保したうえで活動ができるからという意見がほとんどでした。保護者が転勤で仙台に来たため土地勘がないことや、幼児がいるために安全に遊べる場所が分からないという理由もありました。
 また、他の観察会などでは生き物教室のような感じで教えられることが多いのと比べ、川の体験では遊びを通して個々が関心を高めることができることや、保護者や教師に教えられるよりも専門の講師から指導される方が良いのではという声もありました。

ライフジャケットの着用方法レクチャーの様子

■自然体験を通してお子さんに身につけてほしい力について
 体験を通して川の危険性と楽しさを実感する力を身につけてほしいという意見がほとんどでした。川遊びに適した場所や服装に関する知識を身につけることも、流れる水の力や地形の複雑さなど身をもって体験することもとても重要だと思います。自然の中では自分の思うようにならないことが多い事を知ってほしいという意見があったように、川を行ってはいけない場所として遠ざけるよりも、川遊びなどを通じて等身大で自然を体験し何がどう危険かを理解するほうが、様々な場面で身を守ることにいかされるのではないでしょうか。
 誰もが夢中になる魚捕りも、捕まえた水生生物への愛着等が環境保全への関心につながることも大いに考えられるので、生物多様性やSDGs等これからの時代に不可欠な考え方を培うことにつながることが期待されます。

はじめに川の中を歩き流れの速さや足元の不安定さ、
水の冷たさなどを実感します

■自然体験をしたことでお子さんの変化について
 楽しかった!また行きたいと!川遊びに興味を持ったという反応が共通してあり、その後も別の体験イベント(川遊び含む)に参加した方がほとんどでした。イベントで覚えた方法で別の川で魚を捕まえたお子さんや、体験で初めて見た水生生物に興味を持ち、学校の課題の新聞づくりでテーマに取り上げたお子さんもいたようです。
 5年以上体験活動に参加しているお子さんは保護者以上に川を歩くのが上手になったり、新たに釣りに挑戦したりしているそうです。最年長では大学生になって、友達と川遊びに行った際に、きちんと危ない場所や服装等の注意事項を教えてあげたそうです。

網の使い方など最低限のレクチャーの後、
思い思いに探しまわり見つけた1匹は記憶に残ります

■保護者の自然体験の経験について
 ほとんどの方が経験ありという回答でした。自然度の高いところで生活と密接に関わった自然を経験してきた方や、街に暮らしながらも子ども時代にキャンプや釣りに親しんだ経験が、子育てにもいかされているようです。
 昆虫が苦手だったという方も、「気持ち悪い」や「怖い」といった自分の価値観を子どもに押し付けないように努力したそうです。最終的には一緒に参加した観察会で希少な昆虫をはじめてみることができ、良い経験ができたと感じたそうです。活動がきっかけで釣りをするようになった方は、子どもと同じ趣味ができたことで、子どもが成長してからも一緒に遊ぶことができ良かったと話していました。

■まずはできることから
 冒頭の調査結果では、自然体験以外にも手伝いなどの家事体験や文化施設を利用する社会体験等も同様の効果があると紹介されています。ヒアリングでもお風呂掃除や洗濯をたたむなどの家事手伝いや科学館や市民センターの企画などを積極的に利用しているケースがほとんどでした。身近な体験に慣れたのちに川遊び等の自然体験を利用すると、より効果が高まりそうです。

令和2年度の活動の様子はこちらからご覧になれます