-広瀬川1万人プロジェクトと協力して行った温熱環境測定-
東北大学工学研究科 都市・建築学専攻
教授 持田灯さん、菊池大さん、弓野沙織さん、大多和真さん
■仙台市におけるヒートアイランドと都市温暖化
近年、都市部の表面被覆の改変や都市活動に伴うエネルギー消費の増大、高密度化に伴う都市部の風速低下等により、ヒートアイランド現象が深刻化しており、仙台においても都市部の気温上昇は地球温暖化の数倍ものスピードで進行していると言われています。
■広瀬川1万人プロジェクトの協力により温熱環境測定を実施
最近の研究により、仙台のような沿岸都市では、海風の流入が夏季の日中の気温上昇を抑制していることがわかってきました。河川空間は、海風の通り道となるとともに、水面が低温に保たれていれば大気を冷却するため、ヒートアイランドが進行する都市内部の貴重な冷熱源として、その効果が注目されています。しかし、多くの場合、河川の冷却効果の恩恵に浴するのは、比較的狭い範囲に限られています。一方、広瀬川は市街地中心で大きく蛇行しており、周辺の建物配置等によっては、川筋に沿って吹く風を、市街地内に取り込むことが可能ではないかと期待されます。
東北大学都市・建築学専攻の持田研究室では、東北工業大学建築学科の渡辺研究室と共同で、広瀬川が市街地の温熱環境に与える影響を定量的に評価することを目的として、昨年9月の広瀬川1万人プロジェクト(URL: http://10000p.blog76.fc2.com/)の一斉清掃時とその翌日に、同プロジェクト参加者の皆様のご協力の下、広瀬川流域の一斉清掃の5会場(折立、澱橋、米ヶ袋、宮沢橋、閖上)で温熱環境測定及び被験者アンケートを実施しました。
図 各測定点の様子
以下では詳細な温熱環境測定を行った米ヶ袋地区についての結果を報告します。測定領域と測定点を下図に示します。この測定点において、温湿度、風向風速の測定、さらにサーモカメラの撮影による表面温度の比較を行いました。
図 測定地区と測定点詳細(米ヶ袋地区)
■河川空間と市街地の熱画像の比較
サーモカメラで撮影した熱画像により広瀬川と住宅街の表面温度を比較した結果を下図に示します。左は河川敷から広瀬川を撮影したもの、右は住宅街を撮影したものです。川の表面は、建物壁面や土壌と比較して低温に保たれており、住宅地では、日射が当たる部分の道路やブロック塀等の人工被覆の表面温度がとても高くなっています。市街地の道路上と広瀬川の水面上では表面温度の差が最大約25℃もあり、広瀬川が仙台市内の貴重な冷源となっていることがわかります。
図 サーモカメラによる熱画像