vol.12 大切にしたい広瀬川からの景観の空間保全に向けて

東北工業大学 建設システム工学科 助教授 松山正將さん

1:はじめに

仙台の母なる川と呼ばれている広瀬川は、その水源を奥羽山脈の関山峠付近に発する流域面積約311km2、主流長約46kmの河川で、1級河川名取川の最大の支流です。仙台市は、この広瀬川の広大な段丘地形の上に発展してきたまちで、広瀬川の清流は藩政の時代から仙台の風土を育み、「杜の都」のシンボルとして仙台城が築城された青葉山丘陵とともに、今日まで市民に潤いと心の安らぎを与え、市民の日々の暮らしと深い関わりのある空間を提供しています。

しかし、都市化の進展は著しく、なかでも青葉山丘陵東端沿いを流れる広瀬川隣接地域の建物の高層化が顕著となり、いつまでも変わらないで欲しい広瀬川の堤防沿や橋上から眺める景観に異変の兆しが出はじめて、この大切な市民共有の資産継承に大きな問題を提起しているように考えています。

2:景観撮影の方法

『「何時来ても、広瀬川の堤防でせせらぎを聞きながら眺める青葉山のたたずまいは変わりませんネ。」、「この橋からの懐かしい風景は、子供の頃と同じです・・・。」』、このように広瀬川から眺める景観を次代へ引き継げるよう維持して行くには何か新しい「指標」を創る必要性があります。ここでは、市民の多くの方々が散策やジョギングなどで訪れる広瀬川からの景観定点観測を行い、景観保全のための「指標」創りの試みについて報告しようと思います。

景観の定点観測場所には、広瀬川に架かる次の牛越橋、澱橋、仲の瀬橋、大橋、評定河原橋、霊屋橋、愛宕大橋、愛宕橋、宮沢橋の9ヶ所を対象に、それぞれの橋梁上中央を景観観測点として選定しました。景観撮影に用いる機器は、三脚にトータルステーションと呼ばれる測量機器を取り付け、そのトータルステーションにデジタル一眼レフカメラを装着して使用します。橋の支間中央歩道上に設けた景観観測点に、これらの撮影機器でカメラレンズの中心を橋面から1.5mの高さに設置し、磁北を確定してから水平に右回りで22度30分間隔ごとに景観を撮影し、360度全周囲16方位の景観を記録します。撮影時期は、もちろん広瀬川の彩り豊かな表情にあわせて春夏秋冬に配慮して観測を行います。

景観の定点観測地域
視通率と視準率の考え方