vol.9 自然豊かな広瀬川の魅力再発見

「きょうの広瀬川」HP運営・映像作家 菊地重夫さん

■きょうの広瀬川

「きょうの広瀬川」のホームページを始めたのは6年前のことです。仙台市のシンボルとしての「広瀬川」の名は多くの市民が知っていますが、その現状についてはあまり知られていないのでは、ということで、NPO法人「広瀬川の清流を守る会」では新しくHPを立ち上げることになりました。その中で私は「きょうの広瀬川」を担当することになり、広瀬川の日々の姿を毎日、映像で配信することになったのです。

原則として朝、広瀬川に通うのが、私の日課です。自宅から広瀬川までは自転車で向かいます。コースは中流域の広瀬橋から愛宕橋の間です。
広瀬川に通うのは40年ぶりで、河原の一部はきれいに整備されるなど昔の面影はなかったのですが、中州や寄州では手つかずの自然が残されており、植物や虫、魚や鳥達が迎えてくれました。

■広瀬川の四季

立春を過ぎた頃、河原では「ネコヤナギ」の芽が膨らみ、日当たりのよい土手では「オオイヌノフグリ」の小さな花が咲き始めます。広瀬川で見つけた最初の春です。続いて「ナズナ」など春の草花が次々と開花します。ぎこちないですが「ウグイス」の鳴く声も聞こえてきます。
桜の咲く頃、川は緑白色のミネラル分を多く含んだ雪解け水で水量が増加します。川の側にある街路樹ではいろいろな種類の桜の花が次々と開花します。広瀬橋のすぐ上流にある「広瀬公園」の桜並木はこの付近で一番初めに花が咲き、開花宣言が出された日の夕刊に載るのが恒例になっています。また、きれいなトイレも側にあることから隠れた花見の穴場になっています。

5月の連休が終わる頃、郡山堰より下流では「マルタウグイ」が海から遡上してきます。広瀬橋から下を見るとたくさんの魚が群れを成しており、郡山堰の手前では水しぶきが上がっています。

河原の木々が新緑の緑に覆われた頃、鳥達の子育ての季節が始まります。巣立ったばかりの「巣立ち雛」がぎこちなく飛び回っています。

梅雨

梅雨に入る頃になると愛宕堰の中州付近からは清流にしか住まないと言われている「カジカガエル」の鳴く声が聞こえてきます。「残したい日本の音風景100選」にも選ばれており、広瀬川の自然環境のすばらしさを示しています。下流の葦原(あしはら)では「オオヨシキリ」が盛んに鳴き始め、しばらくすると仙台市の鳥「カッコウ」の声も聞こえてきます。郡山堰の下では堰を昇ろうとしている「稚アユ」を「ササゴイ」「ゴイサギ」などの鳥達が狙っています。

広瀬川の桜
郡山堰でアユを狙うゴイサギ

梅雨が明け、夏休みに入ると虫採りの子供達に出会います。色々な種類の「チョウ」や「トンボ」を初め、「カミキリムシ」「コガネムシ」も多く見かけます。木々の間からは「セミ」の声も聞こえてきます。

夏も終わりの20日盆の日、宮沢河川敷は「灯ろう流し」「花火大会」が行われ、行く夏を惜しむたくさんの人々で賑わいます。

台風の季節、一旦大雨が降ると、水不足で石ころだらけの川が川幅いっぱいの濁流に変わります。河原の草むらからは虫の音が聞こえ、歩くと「バッタ」が飛び出してきます。

芋煮会のシーズン、河川敷は鍋を囲んだグループで賑わいます。河原や周辺の木々が色づき始めた頃、 上流からは色とりどりの落ち葉が流れてきます。この頃、広瀬川にも海から「サケ」が遡上してきて産卵します。雄、雌のペアで行動しますが、雌は産卵の穴を掘るため、体中傷だらけになります。産卵を終えて、ここで一生を終えます。

木々の葉が落ち、冬枯れの川は殺風景な景色に変わりますが、一旦、雪が降ったり、氷が張ったりすると別世界に変わります。「ユリカモメ」や「カモ」類などの水鳥、「ジョウビタキ」「カワアイサ」などのいろいろな種類の野鳥が飛来し賑やかになります。愛くるしい表情の「ユリカモメ」は冬の河原のアイドル。散歩に来た人々が次々に与える餌のパンをついばむ姿は冬枯れの河原を明るく楽しませてくれます。

死んだサケ2匹
採餌するオナガガモ
氷に覆われた中州