東北工業大学建築システム工学科助教授 千葉則行さん

■ 仙台市街地の地形・地質概要 (仙台平野)

広瀬川沿いに広がる仙台市街地は、全国の政令都市と同様、海に面した平地に発達しています。地形的にみると、この平地は段丘と低地からなり、西から東に向けて地表の高度が低くなる特徴をもっています。しかも地表部は、地質時代としては最も新しい第四紀の堆積層(洪積層、沖積層)で覆われており、その厚さは海岸線に近づくにつれて厚くなる傾向を示しています。このような特徴を持つ平地の形成には、地殻変動による土地の隆起・沈降、過去の気候変動に伴う海水準の下降・上昇、さらに広瀬川による大量の土砂供給、侵食作用等が深く関わり、今日みられる様な地形(姿)になっています。今回は、広瀬川沿いに暮らしている人々に身近な地形・地質的な話題を紹介します。

■ 仙台市街地に発達する高さの異なる平坦地と坂道 (河岸段丘地形)

仙台市街地を歩くと、平坦な地形が広がっていること、そして小さな坂道がいたる所にあることに気づきます。よくみると、この平坦地は全体的に広瀬川に向かって階段状に低くなる地形を呈し、また坂道の位置を地図に示すと高さの異なる平坦地間のちょうど境界部分にあたることがわかります。これらの地形は広瀬川によって形成された河岸段丘であり、平坦面は段丘面、そして坂道は段丘崖に相当します。

高さの異なる平坦地、すなわち段丘面はその標高、連続性、地表付近を覆う堆積物(火山灰等)の特徴から、高位(標高が高い、形成年代が古い)面から低位面への順でいうと、「台の原段丘」、「仙台上町段丘」、「仙台中町段丘」、「仙台下町段丘」等に区分されます。これらの段丘の分布状況をみると 、仙台市街地の北部に最も高位の「台の原段丘」が広く分布していることから、昔の広瀬川は市街地北部を流れ、次第に現在の河道へと流れを変えていったことがわかります。普段何気なく歩く平坦地、坂道は、じつは広瀬川が造形したものなのです。

片平地区の坂道

地形図 PDFファイル365KB(別画面が開きます)

■ 広瀬川の置き土産と浅い地下水(河岸段丘堆積物)

仙台城下町の形成・発展に欠かせなかったものとして、一つには井戸(水)であったことは容易に想像できます。仙台市街地の表層地盤は、丸みを帯びたレキ(粒径2mm以上)、砂(粒径2~0.075mm)を主体とした半固結の地層からなっています。この地層の厚さは5~10m程度を示し、この下位(直下)には第三紀の岩盤が存在しています。この半固結の地層は段丘堆積物であり、昔の広瀬川の河原に広がっていた石ころ(レキ)や砂からなっています。
一般に、河川段丘堆積層は透水性(地下水の流れ易さの程度)が高いといった特徴を持っています。特に仙台市街地下のように、段丘堆積層の直下に透水性の低い岩盤が存在すると、地下水の水位が浅く、井戸水が汲みやすくなります。このことが伊達藩の城下町の発展に大きく貢献したと思われます。 まさに昔の広瀬川の素敵な置き土産(段丘堆積物)だった訳です。

現在の河原に広がる石ころ