vol.1 地域の写し鏡としての広瀬川

〜地域の地形・暮らし・土地利用と河川〜

東北工業大学環境情報工学科教授 江成敬次郎さん

■広瀬川の概況

広瀬川は、奥羽山脈の仙台と山形の境界近くの関山峠付近を源流として、仙台市域をほぼ南東に流れ、名取川に合流する1級河川です。主流の長さ、約45km、流域面積約311km2です。仙台市域の東南方向の距離が約40~50kmで、市域の面積が約780km2ですから、市域の東南方向ほぼ全体を貫流しており、その流域面積は市域面積の約2/5にあたります。これらの数値は、広瀬川が仙台を代表する河川であることの一面を示しています。

■広瀬川流域の地形的特長

米ヶ袋付近 広瀬川の流域は、上流域が山地で水源涵養地域でもあり、中流域が丘陵地で、都市部・住宅地、下流域が低地で、田園・住宅地となっています。それぞれの面積割合はおおよそ上流域が約35%、中流域が約55%、そして下流域が約10%となっています。この割合は、中流域の割合が大きいという特徴を持っています。その中流域の河岸段丘上に発達した市街地が、仙台の中心地となっています。

流域の最高地点は、海抜約1,500m、最低地点が海抜約2mですから、平均勾配が約3.3%となり、比較的勾配の大きな河川になります。日本の多くの都市が、河川の下流域や河口域に発達したことを考えると、このことが仙台市街地の景観的な特徴の一つの要因となっています。具体的には、段丘から数m~十数m切り込んだ谷の中に、狭い扇状地的部分を作って、市街地の中を広瀬川が流れているという景観です。
このような地形的特徴は、水の流れと一体となって、自然崖、丘陵、中洲そしてそこに生息する動植物を含めた環境特性を作り出していると言えます。そしてこのような広瀬川の自然環境は、市民の生活や文化にも影響を与えています。

■流域に降った雨の行方

逆に、流域の自然環境やその中での人間の活動が、河川に影響を与えます。特にその水質や水量に大きな影響を与えます。川を流れる水の源は、流域に降った降雨です。流域に降った雨水は、一部が蒸発し、一部が直接河川水になり、残りは、地下に浸透したりして、ゆっくりと河川に入ります。この割合は流域の状態によって変化します。市街地ができ、屋根や舗装道路などが増えると、直接河川水になる割合が大きくなります。しかも河川に入るスピードも速くなります。森林地域では、雨水は樹木などに遮られたりして、時間をかけて地表面に到達します。樹木などに遮られると、そこから直接蒸発する分が増えます。一方、地表に到達した雨水は、地下に浸透し、地下水となり、ゆっくりと河川に入ります。