第2回 「仙台愛宕下水力発電所」って何?

今回は薄井さんの他に、市民主体のまちづくりの実践・支援を行い、仙台都心では広瀬川流域の一帯を、都市と自然が融合する「せんだいセントラルパーク」と位置づけて、その魅力を体験したり、発信したりする活動を続けている「特定非営利活動法人都市デザインワークス」の豊嶋純一さんとも待ち合わせしました。
豊嶋さんに案内していただいたのは「仙台愛宕下水力発電所」跡。仙台の水力発電といえば、日本最古の水力発電所として知られる「三居沢発電所(青葉区荒巻)」が有名ですが、みなさんはこの「仙台愛宕下水力発電所」をご存知でしたか?

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【三居沢発電所・電気百年館】

「仙台愛宕下水力発電所」は、仙台市内の電気会社が大正9年に建設し、翌年に開業。昭和4年頃には操業を停止し、約10年間の短い歴史で幕を閉じました。大橋の下流に築いた堰から取水した広瀬川の水を、約2キロメートルの導水トンネルを通して愛宕山の麓へ。そこに設けた反動水車で発電し、当時の名取郡六郷村(昭和16年に仙台市に合併)へ電気を通して電灯などに運用されていたということです。

【今も残る導水路跡】

【取水堰跡】

この導水トンネルのうち、約1.4キロメートルが現存していますが、一般の人は立ち入ることができません。今回はトンネルの入口部分や広瀬川右岸に残る取水口跡を見せてもらいながら、豊嶋さんからお話を聞きました。
今の広瀬川の流れからすると、発電に必要な水量を確保できたのかどうか疑問に思いましたが―。

「上流にダムが出来る前はかなりの水量で、川幅いっぱいに水が流れていました。背の高い堰もあったので、水力発電に十分な水量も確保できたんですよ」

そう話す豊嶋さん。トンネルの中は年間を通して16度くらいの温度に保たれており、夏場はトンネルを吹き抜ける風を天然のクーラーのように利用していた住民もいたとも教えてくれました。また、発電の際に流した後の水はプールに使われたり、発電事業として使われなくなったトンネル内で民間事業者が"もやし"を生産し学校給食に出されたりするなど、発電以外の使われ方もあったそうです。

【大橋下流の様子】

【大橋下流の様子】 

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【対岸から見た取水堰跡(H25.11撮影)】

歴史的な遺産ともいえる「仙台愛宕下水力発電所」跡。いろいろな話を聞いているうちに、もっと多くの人たちに知ってもらえたらなと思いました。

【「仙台愛宕下水力発電所」の施設跡を説明する豊嶋さん】