
『川の思い出』
●聞き手
ここで、川に関する思い出・エピソードなど伺いたいと思います。岩手県釜石市出身ということで、地元には「甲子川」がありますが、印象に残っていることはありますか。
●あんべさん
鉱山の町で、甲子川の上流に住んでいたのですが、学校に通う道に沿って流れているんです。桜の並木があり、よく友人と釣りをしたりしました。
●聞き手
今は、川は危ないからといって子どもを近づけないので、川離れの傾向があるようです。広瀬川でも子どもたちが遊んでいる風景はあまりないようで、昔のそういった遊びというのは、貴重なのだなと思います。
●あんべさん
でも、そこは流量が少なくて、流されるという心配はない川でした。
●聞き手
遠野市では「猿ヶ石川」がありますが、そちらでは何かありますか。
●あんべさん
遊んだ記憶はないですね。ただ、自転車で走ったことはありますよ。サイクリングロードが川に沿ってあって、そこも桜並木がきれいですね。大きな川の他に色々な小川があって、そこにカッパが出る淵とかがあり、その辺が遠野はおもしろいですね。
●聞き手
暗闇に何かいるなというような、民話のような雰囲気がありますよね。
●あんべさん
結構、広瀬川もそういう雰囲気、夜になると怖い感じはありますよね。広瀬川は観光客の方には、せせらぎだけの緩やかな川のイメージなのでしょうけど、実際は表情が色々あって、意外に流れも激しくてギャップがあると思うんですよ。
●聞き手
広瀬川の近くにお住まいとのことですが、仙台に住むことになったいきさつについて教えていただけますか。
●あんべさん
東京で暮らしているうちに、ずっとここだけに住んでいて良いのかなという疑問がありました。また、仕事上どこに暮らしてもいいんじゃないのかという思いもあり、奈良や沖縄に住んでみたいなという選択肢の中に、私も妻も東北出身ということで、空港もあるし、ふるさとにも東京にも近いし、「仙台・・・いいんじゃないの」という流れでした。
●聞き手
広瀬川を初めて見たのは、こちらに移り住んでからですか。
●あんべさん
いいえ。コンサートで何度も来ているのでね。
●聞き手
そうしますと、仙台イコール広瀬川という印象はありましたか。

●あんべさん
いいえ。あまり感じませんでしたね。仙台というと、小学校の修学旅行で来たときの、駅前にあった当時「丸光」というデパートの印象が強くて、そこの屋上にある遊園地で遊んだという思い出と、あとは松島で遊覧船に乗って、はしゃぎすぎてしまって降りる時に海に落ちてすごくショックだったという思い出なんですよ。
やっぱり、子どもの頃は自然の中で育っていましたから、山や川などよりは、ビルなどの建物にびっくりするものです。だから、そういった印象はあまりないのだと思います。
●聞き手
仙台に住んでみてからの広瀬川や仙台のイメージは、昔とは違いましたか。
●あんべさん
どうでしょう。特に変わりなく、落ち着いて広瀬川を眺めて見ているといった感じでしょうか。あと、市民会館でのコンサートの時は、よく広瀬川を見ていましたね。
●聞き手
広瀬川の景観で特徴的なのは、崖の上からの眺めと、下から自然崖を見上げるところだと思います。市民会館でもそうですが、ここのお店からの広瀬川の眺めなども、そうですね。
●あんべさん
あとは芋煮会ですか。実は、芋煮会やったことないんです。みんなが「芋煮会!芋煮会!」と言って楽しそうにしているので、一度見てみたいと思って、一昨年やっている姿を見に行きました。楽しそうでしたね。
●聞き手
私は東京出身で大学から仙台に住んでおりますが、大学生のとき初めて芋煮会を知ったんです。どちらかというとそれまでバーベキューが主流だったので、文化の違いを感じました。
●聞き手
地域によって呼び名が違って、仙台・山形は「芋煮会」、秋田ですと「鍋っこ遠足」って言うんですね。
●あんべさん
秋田だと鍋は「きりたんぽ」なんですか。
●聞き手
必ずしもそうではなく、いろいろありますが芋煮もあります。秋になると東北では屋外で鍋をするという慣習があるのだと思いますが、芋煮会というとやはり河原で、というイメージでしょうか。
●あんべさん
河原、何か座り心地が悪そうだよね。

●聞き手
この前、牛越緑地の芋煮会の様子を見ましたが、すごくたくさんの人がいて、皆さん座るところもなく、立って食べていました。
さて、作詞や作曲などの音楽活動で広瀬川に関わる事は何かありますか。
●あんべさん
それはありますよ。年間を通して花火大会や色々なイベントがあるので、いつかは仙台の歌のようなものを作りたいなと思っています。
●聞き手
楽しみにしております。現在、広瀬川市民会議という市民団体が広瀬川にちなんだ弦楽四重奏を作っていまして、ようやく曲がまとまったところです。年明けに発表会を行い、広瀬川にちなんだ文化活動もやっていこうとしているところです。ゆくゆくは、広瀬川にちなんだ曲ばかりのコンサートをやりたいと考えているようですので、是非お願いします。
●あんべさん
広瀬川の歌って作りづらいですよね。何と言っても、さとう宗幸さんという最初の方がいますから。
●聞き手
宗幸さんも「とっておきの音楽祭」の顧問をされていますが、よくお会いする機会があるのでしょうか。
●あんべさん
ありますね。宗幸さんは東北の兄貴という感じです。声も甘いんですが、顔もいいですよね。ハンサムだなと思います。
●聞き手
アーティストの部分もあり、かつ親しみやすい雰囲気もあり、市民活動にもいろいろ関わられております。この「私の広瀬川インタビュー」の初回にもご登場いただきました。あんべさんも同じく市民活動に力を入れてらっしゃるので、これからも協力いただきたいと思います。
●聞き手
ソロ活動で全国を回ってみて、お気に入りの場所はありますか。
●あんべさん
松江とかはいいですね。昔からの街と川とがすごくマッチしていて、いい雰囲気ですね。すごく好きです。
●聞き手
そういった意味では、仙台と広瀬川のマッチングはまだまだでしょうか。
●あんべさん
色々な歴史的背景もあると思うんですけど、仙台は空襲があったということが大きいと思います。
●聞き手
仙台の街は高低差もあり、そうした街の構造も含め川と合った街づくりというのは難しいのかもしれません。
●あんべさん
地域がまとまって、100年単位で街づくりを行っていけると良いですね。宮城県美術館や国際センターのあたりは一番美しい場所だと思いますよ。