『千葉選手にとってのサッカーとは』

●聞き手

以前は、シーズン中の調子の波が比較的激しいというようなお話も伺いましたが。

●千葉選手

そうした調子の波は、なるべくなくそうと思っています。年間を通して戦っていくので、チームとしても個人としても、調子の良い悪いという時期がどうしてもあるので、その差を減らすことを心掛けています。

●聞き手

どうしてもプレーの調子が悪いと、視界が狭まって感じるそうですが。

●千葉選手

ありますね。単純に事前に周りを見ておくことを忘れていたりだとか、そういうことも含めて、自信を無くしてる時は視野が狭くなってしまうことが自然にあります。

●聞き手

自分で、ああ今は調子が落ちてきているなというとき、そこから調子を上向きに変えていくコツのようなものはありますか。

●千葉選手

今自分がそういう状況にいる、ということに気づくのは、昔よりも早くなってきていると思います。そしてそういう時には、何ができていないのかを考えるようにします。結果的に、昔よりは調子が悪い時の間隔は狭まってきていると思います。

●聞き手

長い選手生活の中で、調子を自分でコントロールできるようになってきたということでしょうか。ところで、今年でプロ生活13年目に入りましたが、ある意味では、千葉選手は当初の夢を実現したといえるのではないでしょうか。

●千葉選手

そうですね。もちろんそうなりたいなと思ってはいましたが、ぼくの場合は周りの力があったからだと思います。周りがぼくを押し上げてくれて、ぼくはそれに乗っかっていただけなんです。だから不思議なんですよね。自分だけの力ではここまで絶対登れなかったと思いますし、周りの人の力がとても大きかったな、と思います。

●聞き手

スポーツ選手やアスリートの方のお話で、あらかじめ自分で成功した姿とか、これからの目標などをイメージして、自分はそれを実現できると思って取り組んでいるという話を聞きますが、それよりも、気づいたらそうなっていたという感じなのでしょうか。

●千葉選手

成功をイメージして取り組むということは誰もがやっていると思います。やはり自分にできないことがあっても、いいイメージを持って取り組んでいかないと、どうしてもレベルの高い中にいるとついて行けなくなってしまいます。自信を無くしていても常に成功イメージを持ってやっていくことはすごく大事なことですね。

●聞き手

千葉選手の場合、シーズン当初に自分のポジションに誰か違う人がレギュラーで入っていても、シーズンを終わってみればやはり千葉選手がそのポジションにいた、というケースが多いように思えますが、そういうメンタリティーをお持ちだからなのでしょうね。

●千葉選手

意識として、自分が周りよりも劣っているから出られないんだという考え方はしないようにしています。例えば自分がレギュラーとして出られないのは、いいものを周りの人達が沢山持っているからで、それを自分がなんとか学ばなければいけないと思うようにするんです。その人達のいいところを吸収して、また自分も上がっていけば、自然に結果もいいものになるんじゃないかなという考えです。

●聞き手

なるほど。でもそれは、若いうちはそのように考えやすいのかもしれませんが、プロとしてキャリアを重ねていくにしたがって、そういう考え方を持つことは難しくなっていくのではないでしょうか。

●千葉選手

それはあります。でも、ぼくのこの基本スタイルはこれからも変わらないですね。若い選手でもすごいと思うところが沢山ありますし、やはり年齢の関係ない世界ですから、そうした選手からは学ばないといけないし、相手が18歳でもお互いに尊敬しなければいけないと思います。

●聞き手

なるほど。ところで、千葉選手が入団した時のチームメイトであるリトバルスキー選手が現在監督に就任しているアビスパ福岡と第6節で対戦し、見事勝利されました。そうしたことに象徴されるように、ブランメルからベガルタとなり、J1への昇格と降格など、これまでの千葉選手の経歴を振り返ってみますと、よくスポーツにはドラマがあるといいますが、ドラマというよりも、人生の旅を見ているというようなイメージを感じます。

●千葉選手

それは、ありますね。でも、ぼくは、今はまだ人生の旅の出だしにすぎないと思っています。次は次で自分の道があると思うので、今は今のことを一生懸命やろうと思っています。そして、きっとその後は、また新たなことを始めると思います。

●聞き手

特にプロサッカーの選手というと、人生の中で体力面で一番充実している時期をそこにつぎ込むわけですから、その次を考えることはなかなか大変だと思いますが。

●千葉選手

本当のサッカー選手というか、心からサッカーが大好きな人たちの中には、やはり仕事としてサッカーをやっていて、その後もサッカーと関わりながら仕事をしていけたらなというのが理想だと思います。自分は・・・うーん、サッカーを愛してる子供達の夢を壊すようなことになっちゃうといけないですが、サッカー選手をやめた後には、またそこから新たなものが始まるとぼくは思っています。

●聞き手

これまで千葉選手のお話を伺ってますと、サッカーに限らず他の世界でもご活躍されそうな印象を受けます。例えば、良いところは相手の年齢に関係なく見習っていこうという考え方は、やはりどの世界の仕事にも共通する話だと思いますが、サッカー選手の皆さんが皆そうはお考えではないのでは。

●千葉選手

そうですね。この世界にはやはりあまり考えない人も多いので(笑)。極端な例えですが、ぼくらは会社の商品なんですね。もちろんその商品としての魅力を磨くのはぼくら自身ですけども、それを会社がどう使うかは別の話です。ただ、その商品価値を高めるために、自分も一生懸命やらないとダメだと思いますが。

●聞き手

千葉選手には、これからもずっとベガルタ仙台一筋でプレーし続けてほしいと思ってるサポーターが多いと思います。

●千葉選手

気持ちはずっとここでやりたいですね。さっきも言いましたが、ほんとにぼくは、このチームと周りの人たちによって育てられたという気持ちがすごくあります。なんとかこのチームにいる間に、逆にぼくからチームに、プレーそのものでも応えることはもちろんですが、それ以外にも何かお返ししたい、これまでチームがしてくれたことに応えたいと思っています。それがJ1昇格という結果として残れば、自分がここでサッカー選手であったという印になると思いますし、それが出来れば一番だと思います。

『メッセージ』

●聞き手

ベガルタ仙台以外にも、仙台にはプロスポーツがつくられて、今ではプロスポーツが盛んな街になってきています。さらに今後、仙台の街を活気づけていくために、何かお考えがありましたらお伺いしたいのですが。

●千葉選手

仙台のプロスポーツチームは、人間に例えると、子供とまでは言いませんが、まだまだ歴史は新しいですよね。ベガルタ仙台ができて、それから野球、バスケットボールと今ではこれが普通に思いますが、本当にそれを根付かせることが必要だと思います。そのためには、東北のプロチームとして、ぼくらもお互い協力してやっていかないといけないなと思います。仕事面ではお互いに頑張りましょうね、というようにしていますが、プライベートでは東北楽天ゴールデンイーグルスさんの試合を見に行くこともありますよ。

●聞き手

ベガルタ仙台にしても東北楽天ゴールデンイーグルスにしても、何か地元地域に対して返していこうという雰囲気をすごく感じます。それはやはり選手のみなさんも意識されていますか。

●千葉選手

うちは特にいま危機感があるのではないでしょうか。楽天さんは経営面でもいろいろ取り組みされているので、そのあたりをうちもよく学んで、お互い切磋琢磨し、ぼくらもいい試合をしていけばお客さんにももっと楽しんでもらえると思います。ゆくゆくは一日で両方の試合をセットで見に行けるようになるといいですね。

●聞き手

そうなると仙台のスポーツファンにとっては最高ですよね。
さて、平成14年のアンケート結果によると、広瀬川を仙台のシンボルだと思う市民は多いようですが、実際に広瀬川へ行ったりするという機会はそれほど多くないという結果が出ています。千葉選手でしたら、どのような空間なら子供の頃から川と親しむことができると思いますか。

●千葉選手

ぼくは、小さい頃に、川には親が連れて行ってくれたという印象がすごくあります。だから、子供を連れて川へ遊びに行ったりするのはすごくいいのではないかと思いますね。

●聞き手

仙台市では市民活動団体の方たちと協働しながら、家族で広瀬川に親しむためのイベント「広瀬川で遊ぼう」を行っています。5月3、4、5日の3日間、場所は若林区の地下鉄河原町駅の近くの宮沢緑地で、親子で川に親しんでいただこうと、例えばボートに乗ってもらったり、川辺で乗馬を体験してもらったり、子供の日にちなんで鯉のぼりを流したりというようなイベントです。もし機会がありましたらぜひお越しください。

●千葉選手

子供いないですよ、ぼく。連れ子でいいですかね(笑)。

●聞き手

台原周辺のお友達やご家族の方などをお誘いいただければと思います。
ところで、このイベントを企画しているのは、「広瀬川市民会議」という広瀬川に関する市民活動のネットワーク組織ですが、こうしたイベントを毎年実施したり、広瀬川のPRをするために、「清流広瀬川」という荒町の造り酒屋さんで造っているお酒の企画や広報を行ったりしています。
最後に、こうした広瀬川に関して活動している皆さんとベガルタのサポーターの皆さんに、メッセージをいただければと思います。

●千葉選手

この話をいただいてから、いろいろ広瀬川のことを調べてみましたが、改めて仙台の街にとっては大切な存在なんだなと思いました。ですから、広瀬川について活動している皆さんには、ぜひこうした活動を続けていっていただき、さらに広瀬川の良さをアピールしていただきたいと思います。ぼくも僅かながら、何かできればと思います。
それから、ベガルタサポーターの皆さんには、これからも熱い声援をお願いします。

●聞き手

ありがとうございます。4月と9月の最終土曜日には、広瀬川流域の一斉清掃「広瀬川1万人プロジェクト」というのがあります。9月の清掃日の頃には、おそらくJ1昇格が見えてきていると思いますが、千葉選手がご参加いただけるとなれば盛り上がると思いますので、ご都合がつけばぜひお願いします。
また、10月からは仙台・宮城DC(ディスティネーションキャンペーン)が始まりますので、ぜひJ1昇格を決めて、全国から観光でお越しになる方々へ仙台をおおいにピーアールしていただければと思います。
本日はお忙しいところありがとうございました。千葉選手とベガルタ仙台のご活躍を心より願っております。

●千葉選手

ありがとうございます。頑張ります。