第4回 子供にとっての本当の意味での「遊び」が大切

●聞き手

子供の頃の自然体験がいかに大切かよく分かりました。ところで仙台市では、子供の頃から広瀬川に慣れ親しんでもらおうと、「広瀬川ホームページ」において平成20年度から「キッズ広瀬川」を開設し、例えば広瀬川で観察できる生き物などの情報発信をしています。子供たちにもっと広瀬川へ興味を持ってもらうためにアドバイスをいただけますか。

●川島さん

まず、親や地域の人たちが頻繁に子供たちを自然環境の中に連れ出すことが大前提ですが、現代の家庭環境ではそうなっていません。

●聞き手

そうですね。

●川島さん

だから、まずはどんどん子供を連れ出していくことが大事です。その際に理想をいえば、大人が子供たちを遊ばせる、ではいけないんです。子供は自然の中に放り出せば、一人で遊びを見つけますから。だから、大人は安全を確保するための最低限のことをして、そこから先は子供を自由にしてあげる方向に持っていくことが大事だと思います。どうしても、せっかく子供たちを連れて行っても、自由に遊ばせるのではなく、何かプログラムを作って遊ばせてあげる、ということになりがちだと思いますが、子供にとっては、させられ体験と自分で何か見つける体験とでは、全く意味が違うんです。おそらく先ほどの調査における自然体験とは、能動的に自分でやる体験のことだと思います。広瀬川でいえば、流れが速く川幅の大きな所は危ないですが、流れが緩く川幅の狭い所で子供たちを自由にしてあげるといろんな遊びをする。

<参考>新川川での水遊び


●聞き手

「遊ばせる」ではなく「勝手に遊ぶ」ことが大事だと。

●川島さん

例えば「生き物を観察させる」というのも大人の感覚で、放っておいても興味のある子は、河原で石をいじっていれば、下に何かいるのに気がついて、自然に関心を持つというのが本筋であって、「集まってごらん、これが○○だよ」というのは、やっぱり大人が子供に教えようというスタンスですから、子供にとっては面白くない体験なんですよ。そうした体験だけでは、将来的にあまり広がりを持たない可能性があると思います。

●聞き手

なるほど。

●川島さん

私がもし子供の自然体験活動をサポートするとすれば、ちょっと手間はかかりますが、上流に連れて行って、川幅が狭く比較的流れが緩やかな所で、大人は安全の目配りだけする中で、子供には弁当だけ持たせて後は好きにさせたい。石投げをする子もいれば、ぼーっとしている子がいてもいいと思います。多分男の子はジャブジャブ川の中に入ってダムを造ったりして、そこから洪水が起こって大騒ぎするでしょう。でもそれが本当の自然体験だと思います。

●聞き手

現在行われている活動は、先生がおっしゃったものにはまだまだ至らなくて、団体でプログラムを組んで、あまり能動的とはいえない活動が中心ではないかと思いますが、それは私たち大人がもっと環境づくりをしていかなければいけないですね。

●川島さん

自治体でそれをやることは、事故があったら大変だということで難しいとは思います。「自己責任」に関して、世間では全く問わない時代になってしまっているので、子供を預けたら、その後の責任も預けたと親が思い込むような辛い時代ですから、どうしても自治体などが主体となるプログラムだとそうなってしまう。でもそこは勇気を持って、できるだけ安全な場所を確保して、子供たちを自由に放って遊ばせたら面白いだろうと思います。子供たちは、川に入って足にヒルが張り付いたりする体験をしなくてはいけないんですよ。

●聞き手

ちなみに先生は広瀬川で泳いだりされましたか。

●川島さん

芋煮会で奥新川に行く時には、最初から海水パンツをはいて行くんです。芋煮会なのに泳ぐことが前提で(笑)。こうした現代社会だからこそ、自然体験を大事にして欲しいと思いますし、仙台に住んでいてそれができる環境にある幸せを、私たちが生かさない手はないですね。

<参考>初夏の奥新川