■緑がおりなす流域

水の流れによって肥沃な大地となった流域には植物が生えており、川まで連なる緑のネットワークが形成されています(前述の通り都市化した仙台では地面のコンクリート化により必ずしもその通りではありません)。

広瀬川を生かして中流域に緑のネットワークを創りだしたのも伊達政宗公です。水の便の良くない仙台城下を潤すために作られた四ツ谷用水により結果的に緑が育ち屋敷林を増やすことに成功し、その後も屋敷林木を保護する政策により近年に至るまで長らく特徴的な景観を残しています。また、藩政期から城下を取り囲む丘陵地の一部である青葉山は仙台城本丸からの退路の確保のため人の出入りが禁じられていました。それから明治維新後も軍用地で人の手がほとんど加わることのなかった場所だったため、現在でもモミの原生林や希少種などを含む様々な植物が生育し鳥類の他多数の動物も生息し、奥羽山脈からカモシカがやって来る個性的なエリア(小流域)です。

仙台城本丸の水源・御清水(東北大学植物園内)

■せんだいセントラルパーク構想

崖と緑がおりなす個性的なこのエリア(小流域)は、都市と自然が交じり合い杜の都の歴史や景観を十二分に合わせ持ち、これからの[緑と共に暮らすライフスタイル][創造性豊かなコミュニティ]が満喫できる市民生活の中枢拠点として、「せんだいセントラルパーク」と位置付けることができる場所です。

市民・観光客に支持されるパークづくりには、潜在するニーズや次世代のマーケットをしっかりと把握することが不可欠であり、市民主体の新たな価値創造や緑の手入れ等への市民参加の概念、並びに具体のマネジメントシステムの確立が大切です。行政や企業の参画による市民活動・コンテンツ事業のネットワークの循環力と、利用者とともに柔軟な発想力・応用力を備えることで、緑地とその周辺の都市部とを一体のエリア(小流域)として長期的な視点で検討することが可能になるのです。

■おわりに

私が広瀬川流域と聞いて思い浮かんでくるのは、2013年2月に行われた広瀬川フォーラム「I ラブ 広瀬川 ~川のほとりの地形と暮らし~」で拝聴した講師の皆さん(皆川典久さん、古山拓さん、今野_均さん、西大立目祥子さん)のお話です。

・小さな高低差をつくってきた水路と、スケールの大きなスリバチ地形との有機的なつながり。
・水の流れそのものよりもオモシロイ、水辺に集まる人やなんの変哲もない石などのまわりの景色。
・水害を未然に防ぎつつ、水辺を歩けるネットワークづくりや小川に生き物を復活させるまちづくり。
・昔あった川を基盤とした生業や、河童と子どもの遊びなど川のほとりの暮らし。

どのお話もある一つの正解を提示するのではなく捉えどころにゆとりがあるので、価値観が多様化している現代においても、市民の皆さん個々人が解釈できたり様々な側面で共感できたりします。こういったモノ・コト・ヒトを通じた広瀬川の魅力的なコンテンツは、市民の創造力でいくらでも生み出すことができます。次稿では「せんだいセントラルパーク」でここ数年で生み出されている「市民の楽しみ」をご紹介します。

「I ラブ 広瀬川 ~川のほとりの地形と暮らし~」の様子

■参考

せんだいセントラルパーク
http://sendai-cp.net

「I ラブ 広瀬川 ~川のほとりの地形と暮らし~」
https://www.hirosegawa-net.com/oshirase/oshirase20130115.html
http://togetter.com/li/462148