■森の中へ
博物館やテニスコート周辺の森、低木の茂みや草原には、秋から冬にかけて多くの小鳥たちが集まります。探鳥会では、テニスコートの右横を通過し、左回りに東屋まで歩きます。この道すがら観察する機会の多い野鳥を紹介しましょう。
まずは、シジュウカラ、ヒガラ、ヤマガラなどのカラ類。シジュウカラは光沢のある黒い頭部、灰色の背中、白い腹部に黒いネクタイ、ヒガラは、シジュウカラに似た配色ですが一回り小さく、頭部にボサボサした黒い冠羽があるのが特徴です。ヤマガラは、頭部が黒と薄いクリーム色、腹部は明るい茶色、背中は青みがかった灰色、ぬいぐるみのように愛らしい顔立ちです。冬になるとこれらの小鳥たちは、猛禽類などの敵から身を守るために混群を作ります。
低木の茂みや藪にはアオジやルリビタキ、アカハラやシロハラといった大型ツグミ類、草原には、ホオジロやカシラダカ、ベニマシコなどがいます。幸せの青い鳥、ルリビタキに出会えたらラッキー。遭遇率の高さから、秋から冬の青葉山で人気があるのは、なんといってもベニマシコでしょう。ベニマシコのオスは全体的に濃いピンクの体色をもち、目と嘴の付け根付近がまるで猿のように濃い赤色をしていることから、猿の子のようだということで、「紅猿子」と漢字表記されます。くすんだピンク色のメスと共に数羽の群れをなして藪や草原を移動していきます。雪化粧された草原で、朝日を浴びて草の実をついばむベニマシコ達、白い草原に輝く赤、感動ものです。
この他にも広げた羽の黄色が鮮やかなカワラヒワやマヒワ、白い体に黒と紅紫色の翼と長い尾を持つエナガ、日本最小の鳥のひとつ、オリーブ色の身体、頭のてっぺんに黄色の菊の花びらを一枚のせたキクイタダキ達が群れをなして木々を渡ります。
落葉した森では、いわゆるキツツキ類も観察しやすくなります。青葉山で観察する機会が多いのはアカゲラ、アオゲラ、コゲラの3種。ギィーッという声が頭上で聞こえたらコゲラがいる証拠。丹念に幹を目で追っていくと白黒のまだら模様の小鳥が小さな体全体を使って、木の幹を叩き、皮を削っているのが見つかるはずです。静かな森の中では、木を叩くこの音は意外に響くのです。
コゲラよりも身体の大きなアカゲラやアオゲラともなりますと、かなりの音量となります。この、木を叩くコンコン音を「ドラミング」ともいいます。ピョーッという声とドラミングが聞こえたら、耳を澄まして音の発信源を探してください。幹の下から上に向かってらせん状に移動しながら木を叩いているアカゲラやアオゲラが近くにいるはずです。アカゲラは、白黒のまだら模様の中に腹部があざやかな白と赤、アオゲラは全体に灰色がかった緑色で背が抹茶色、アカゲラもアオゲラもオスの頭部に赤斑があります。
向こうの林から「ジェジェッ」という声が聞こえます。だれかが何かに驚いている?のではなく、これはカケス。英語で「ジェイ」と呼ばれる鳥です。カラス科に分類されていますが、渋い配色の美しい鳥です。頭部がゴマ塩、ぶどう褐色を基調とした中に白黒の模様。そして、羽を広げたときに鮮やかなコバルトブルーの逆ハの字模様が浮き上がります。大きさはハシボソカラスより少し小さめ。留鳥ですが、秋冬に山から里に移動してきます。
主役級の鳥が多い青葉山ですが、忘れてならないのがハヤブサです。ハヤブサは頬にひげ状の黒斑が特徴的な猛禽界の貴公子、急降下して狩りをする姿が印象的です。毎年、付近の広瀬川岸壁で繁殖しており、初夏には巣穴から出てきた数羽の幼鳥を観察することができます。探鳥会では、松の高木の頂上付近で羽を休めているハヤブサをかなり高い確率で観察することができます。この他にも、運が良ければオオタカ、ノスリ、ツミといった猛禽類を観察することができます。
■鳥合わせ
博物館前を出発して、そろそろ2時間が経過しました。探鳥会の締めくくりは「鳥合わせ」です。参加者全員で、観察した鳥を確認し記録します。無論、その日の天候や気温、観察する時間帯、テニス大会のようなイベントの有無といった様々な条件により、出会える鳥の数や種類は変わりますが、秋から冬にかけての青葉山探鳥会では、2時間で、多いときには30~40種近くの野鳥を観察しています。
■おわりに
秋から冬の青葉山を思い浮かべながら、出会える可能性が比較的高い野鳥を紹介してきました。一度に全ての野鳥に出会うことはほとんどありませんが、数を重ねることで、より多くの野鳥を観察することができます。
青葉山探鳥会に、ぜひ一度足を運んでみてください。