vol.16 市民・行政協働による広瀬川創生プランの取組み

東北工業大学環境情報工学科教授 江成敬次郎

■広瀬川創生プラン

今から5年前、2005年3月に広瀬川の自然環境の保全と新たな魅力創出を図るために、市民活動団体・NPO・企業・行政が協働で「広瀬川創生プラン」を策定しました。仙台開府四百年記念事業として市の呼び掛けで集まった多くの関係者が、企画の段階から協働で作業を進めてきた点が極めて画期的であり、市民・行政共通の行動計画であることが本プラン(以下、「創生プラン」)の大きな特徴です。

広瀬川は杜の都仙台のシンボルであり、市民にとって誇りでもあります。その広瀬川を後世に引き継いでいくべき貴重な財産として再認識し、市民の主体的な参画を得ながら将来にわたって保全していくとともに、広瀬川の新たな魅力の創出を図っていくことが多くの市民の願いでもあります。創生プランは、そんな願いを実現させるためのアクションプランでもあります。

杜の都・仙台のシンボルである広瀬川

■創生プランの基本理念

「悠久の流れ・広瀬川の自然環境の保全」「広瀬川と共生する暮らしの発見と創出」「市民による連携と市民と行政との協働」を創生プランの基本理念とし、「自然の恵みを育む“ふるさとの川づくり”」「治水・利水・環境のバランスがとれた川づくり」「互いを尊重した地域づくり」をめざしています。そして基本理念に基づき、「協働の仕組みづくり」「親水性の向上」「治水・利水の安定」「河川環境の保全と向上」「河川への関心の高揚」「森林の保全」という六つの基本目標を掲げて、この目標を達成するための施策の方向を創生プランの中に示しています。

■策定後5年間の取組

創生プランの策定後、広瀬川に関心をもつ市民・NPOのネットワーク組織として設立された「広瀬川市民会議」や仙台市広瀬川創生室などが中心となり、プランの目標を達成するため、幾つかの施策の実行にあたって来ました。また、行政の取組みや多くの市民団体なども施策の実行にあたってきました。その中で、広瀬川に関する様々な情報の発信源として期待された「広瀬川ホームページ」の充実、若林区宮沢緑地で5月の連休中に実施されている「広瀬川で遊ぼう」の企画・実行、市民参加の広瀬川清掃活動としての「広瀬川1万人プロジェクト」の企画・実行、などが、これまでの5年間に重点事業として取り組まれました。

「広瀬川で遊ぼう」は2006年にスタートした取り組みで、広瀬川市民会議が中心となって、地元商店街や町内会などでつくられた実行委員会によって企画・運営されています。ゴールデンウィークに、広瀬川に足を運び、親子で楽しめる企画としての、「Eボート試乗体験」、「ポニー乗馬体験」、「親子ゲートボール大会」や鯉流し、屋台出店、展示コーナーなどが用意され、市民に親しまれる行事になってきました。参加者数もスタート時の2,400人から2009年には、4,700人に増加しています。

「広瀬川で遊ぼう」会場風景

「広瀬川1万人プロジェクト」は、杜の都・仙台のシンボルである広瀬川の自然環境を守り、多くの市民が親しめる広瀬川とするため、100万都市仙台の1%・1万人をキーワードとして、市民・企業・行政などでつくられた実行委員会が中心となって取組まれています。仙台市の広瀬川には、全国に先駆けて制定された「広瀬川の清流を守る条例」があります。この条例が制定された昭和49年9月28日にちなみ、まず始めに9月の最終土曜日に、広瀬川一斉清掃活動が取組まれ、その後、4月の一斉清掃やイベントなどの取り組みも始まっています。一斉清掃活動への参加者数は、4月と9月の2回行われ始めた2007年の827人から2009年の1508人へと広がっています。

広瀬川1万人プロジェクト流域一斉清掃の様子

こうした取り組みの前進も影響して、「広瀬川ホームページ」へのアクセス数も、最近は1日平均200件を越える程度になっています。この数値は、2006年度の約100件の2倍となっており、市民の関心の広がりが感じられてきました。