■ 下流域に広がる水田地帯の集落の立地条件 (洪水で形成された微高地)

広瀬川の下流域に広がる昔の水田地帯には、集落が点在した形でみられます。よくみると、これらの集落は水田地帯の中でもやや標高の高い(1~2m)部分に立地していることがわかります。この微高地は自然堤防と呼ばれるもので、洪水時に広瀬川が運んできた土砂が河道の岸に沿って堆積して形成されたものです。この地盤表層部はやや締まった砂・レキからなり、乾燥していること、また氾濫時にも水没から逃れられることもあって、この微高地に古くから集落が発達してきました。

一方、水田として利用されてきた低所は、後背湿地と呼ばれ、自然堤防の背後にできる湿地帯に相当します。一般に細粒な堆積物(砂泥)からなり、軟弱となっている場合が多いために水田として利用されてきました。近年の市街地の拡大によって、水田地帯にも宅地化が押し寄せていますが、地盤の軟弱対策を施しながら開発が進められています。

宅地化が進む水田地帯

■ 母なる川,広瀬川 (自然と人間の共存)

このように広瀬川は,仙台市街地を支える大地の形成に大きく関わり,いわば生みの親ともいえます。仙台市街地に住んできた人々は,いずれの時代にも広瀬川のいろんな恩恵を受けて生活してきました。しかし,普段穏やかな広瀬川も時として,洪水を起こしたりして豹変するときもあり,人々に災いをもたらすことがあります。しかし,この洪水も,見方を変えてみると下流側の水田地帯に新しい大量の土砂(栄養の豊富な土壌)を供給するといった効果をもたらす自然の恵みであり,また集落の立地しやすい地盤を形成することにも繋がっています。

科学技術が進歩して容易に地盤の人工改変がなされた結果,様々な社会問題が浮き彫りになり,景観保護などが盛んに叫ばれるようになりました。まさに自然と人間社会との共存が重要視されつつあります。 今住んでいる身近な土地の成り立ちを知る,まずここからスタートすることも大事です。