■大橋から広瀬川を眺める

五色沼を後にして、広瀬川にかかる大橋に向かいます。中央部のデッキから道行く人に配慮しながら観察しましょう。まずは川の下流から。中州にいる尾の長い白黒の小鳥はセグロセキレイ。黒い顔、目の上に白い眉斑があります。近くに同じような白とグレーの小鳥がいますね。顔が白く、目を通過するように黒い線があります。こちらはハクセキレイ。浅瀬をゆっくり歩いている、腹部が黄色の小鳥はキセキレイ。通常この辺りで観察できるセキレイの仲間はこの3種、尾で石をトントンと叩くようにみえるので「イシタタキ」などとも呼ばれます。中州では、セキレイ類の他にイソシギやコチドリといったシギ・チドリ類、タヒバリなどが観察できることもあります。

キセキレイ

右手の岸辺近くにいるのはカルガモです。初夏には、ふわふわの雛たちが母ガモの後ろを行儀よく並んで泳ぐ愛らしい光景が見られます。カルガモは留鳥ですから、一年を通して観察できますが、秋から冬、早春にかけては、渡りをするカモ類を観察することができます。マガモ、コガモ、オナガガモ、運がよければ、頬が白いホオジロガモが観察できるかもしれません。マガモのオスは頭部が深い緑色、首に白いラインがあります。コガモはマガモよりも一回り小さく、オスの頭部は茶色と緑色、目の周りが緑色です。マガモよりも大きいのがオナガガモ。オスは頭部が黒褐色、名前の通り、尾が長いのが特徴です。そう、これらの簡単に識別できる特徴は、すべて「オス」に関するものです。鳥類は、オスとメスが全く異なる体色や形状のものが多いのです。

多くのカモ類は、オスは特徴的な体色や羽形状をしています。メスは、というと、無論特徴はありますが、地味な色が多いようです。オスはメスに対するアピールのために派手な装い、メスは安全に子育てしなければなりませんから、地味な装いなのでしょう。また、オスであっても、幼鳥から若鳥の間はメスと同じように地味な装い、繁殖可能になると派手な装いというように成長過程でも変化します。幼鳥や若鳥は外敵の脅威にさらされる機会が多いことから目立たない体色なのかもしれません。体色の変化ひとつを見ても自然の巧みさを感じます。ちなみにカルガモはというと、雌雄ほとんど同色です。

大橋の上流側も観察してみましょう。交通量が多いですから、横断の際は十分に気をつけてください。小さい水鳥がいます。すばやく水に潜り、なかなか水面に出てきません。ようやく姿を現しました。先ほど潜った場所から随分離れています。カイツブリです。カモ類には、このカイツブリのように水に潜って餌をとるいわゆる潜水ガモとカルガモやオナガガモのように、潜水せずに首だけを水に入れて餌をとるカモがいます。

いっせいに水面に首を入れたオナガガモ

遠くの方に頭部が黒緑色、胸から腹部が白の水鳥が見えます。カワアイサのオスです。そばにいる、頭部が栗茶色、後頭部にボサボサの冠羽をもっているのはカワアイサのメスです。雌雄ともに嘴が赤く、配色が明瞭でメスも美しいのが特徴です。カワアイサは、カルガモと同じ留鳥ですが、秋から春先までが観察しやすいようです。

カワアイサ♂

左手の浅瀬にいるのはサギ類。全身が白いのはダイサギ。頭部に黒いラインがあり、全体がグレーに見えるのはアオサギです。アオサギは翼を広げると160cmもある、日本のサギの仲間では最大の鳥です。サギ達はゆっくり浅瀬を歩いて、餌となる小魚などを探しています。ちなみにシラサギという名称の鳥はいません。ダイサギ、チュウサギ、コサギなどの総称がいわゆるシラサギということになります。

ダイサギ

つい、水面ばかり見てしまいますが、時々空も見上げてください。カワウやユリカモメ、オオハクチョウ、猛禽類、時にはなんとヤマセミが頭上をかすめることも。百万都市仙台の中心部に程近いこの大橋で、渓流に住む希少種のヤマセミが観察できるのです。

鳥達が次々と登場し、時が立つのを忘れてしまう大橋ですが、そろそろ移動しましょうか。そうそう、上流に向かって右手の河川敷には、多くの小鳥たちもやってきます。特に秋から冬にかけては、草の実や越冬昆虫などを求めて、カワラヒワ、マヒワ、シメ、ベニマシコ、ジョウビタキ、モズなどが集います。橋の上から、これらの小鳥たちを見つけるのは少々経験が必要です。小鳥たちは青葉山の森の中でじっくり観察することにしましょう。

モズ

研究レポートvol23に続く