■市街地上空と河川周辺の風向・風速の比較

下図の(1)は仙台管区気象台(測定高さ:地上52m)で測定された風向・風速の変化、(2)は米ヶ袋の河川敷(測定高さ:地上1.2m)で測定された風向風速の変化です。

仙台管区気象台で測定された風向は9時から10時にかけてはほぼ北西で、その後11時頃からは風向は南から南東に変化しました。この南東風は、仙台市の夏季日中の卓越風向であり、風向が南東になった11時過ぎには風速が大きくなっていることから、海風が仙台中心部に到達したものと推定されます。
一方、米ヶ袋の河川敷における風向は、9時から10時にかけてほぼ南西ですが、11時頃からは南東から東に変化しており、上空風の向きとは異なっています。すなわち上空風が北から南よりに変化するのに伴って、河川敷では川筋の蛇行に沿う形で、風向が河川の上流側から吹く向き(南西)から、下流側から吹く向き(東)に変化しており、河川上を吹く風が周辺の地形の強い影響を受けていることが確認されました。

図 風向・風速の経時変化

(1) 仙台管区気象台(測定高さ:地上52m)
(2) 米ヶ袋河川敷(測定高さ:地上1.2m)

■風向変化と川風の影響範囲の関係

風向の変化が市街地の気温にどのような影響を及ぼしているかを調べるため、河川敷の風向と市街地の気温分布の関係について調べました。ここでは下図のように北東から南西に向う道路の方向をx軸、北西から南東に向う道路の方向をy軸と定義し、風向が大きく変化する午前10時から11時の間の気温の変化を示します。

図:x軸とy軸の定義

x軸では海風が到達する前の時間帯の風向と道路軸が概ね一致しており、海風到達後は風向と道路軸が一致しません。x軸の温度分布を見ると(下図(1))、測定点3から6への気温変化が、海風到達前に比べ海風到達後では上昇傾向が強くなることがわかります。
またy軸では海風が到達する前の時間帯では風向と道路軸が一致せず、海風到達後は風向と道路軸が概ね一致します。y軸の温度分布を見ると(下図(2))、測定点1から11への気温変化が、x軸方向の道路軸上の気温分布とは対照的に、海風到達前に比べ海風到達後では上昇傾向が抑えられていることがわかります。これらのことから道路軸と河川敷の風向が一致する時間帯においてはx軸方向では約300m、y軸方向では約450m程内陸まで河川の冷却効果が及んでいることが確認できました。

図 温度変化分布

(1) x軸上の気温変化
(2) y軸上の気温変化

■おわりに

広瀬川1万人プロジェクトの関係者の皆様、米ヶ袋在住の皆様のご協力により、ある特定の気象条件の下ではありますが、広瀬川が周辺市街地の気温上昇を抑制していることを示す貴重なデータを得ることができました。昨年度の測定から、広瀬川周辺の地形と風の流れを考慮して、周辺の建物や道路の配置を見直すことができれば、周辺の住宅地の温熱環境を改善することが可能であるという見通しを持つことができたと考えています。

本年度も、広瀬川1万人プロジェクトの関係者の皆様のご協力を頂き、様々な気象条件下におけるデータ採取を目的として、より長期間の測定を実施することができました。現在、その結果の分析を進めているところですが、こちらの結果についても、また別の機会にご報告したいと思います。