■広瀬川流域の豊かな自然環境

政孝に建設地を決めさせたその清流の名前が「ニッカワ(新川)」ということですから、不思議な縁を感じます。 宮城峡蒸溜所は仙台市の郊外、山形県境に近い内陸部にあります。国道48号が広瀬川の熊ケ根渓谷を越え山間にかかり始めると行く手の左側に蒸溜所のレンガ作りの建物が見えてきます。北側には鎌倉山の特徴的な姿が大きく聳えます。蒸溜所の南側を流れ東の端で広瀬川の清流と合流するのが新川、正確には「新川川」です。山形県境の蔵王山系を水源とする「北沢」と面白山高原周辺を水源とする「南沢」が仙山線の奥新川駅付近で合流した地点から蒸溜所の東端の広瀬川合流地点までのわずか10キロほどの河川が新川なのです。

雪解け水が地表面を流れてできているため、新川の水質はミネラル分をほとんど含まない軟水の上、水量も豊かで四季を通じて比較的安定しています。この豊かな水量を支えているのがこの水系に広がる豊かな森とそこを源とする中小の支流です。水源をたどると大きな滝が流れ込む場合も有りますが、川の周囲の岩肌には小さな水の流れや染み出しがいたるところに見られます。

宮城峡蒸溜所は自然と共生しています

先ほどもご説明しましたが、新川の水量は周辺の豊かな降水量に支えられています。

東京、宮城峡、余市の年間の降水量のグラフを示しました。宮城峡は雪深い余市よりも年間降水量が多いのがわかります。その豊富な水を、新川上流地帯に大きく広がる広葉樹林の森がしっかりと維持しながら、コンスタントに支流へ流していきます。豊かな自然、その広葉樹の森の「自然保水力」こそが、宮城峡蒸溜所の品質を支えているのです。

東京、宮城峡、余市の月平均降水量のグラフ

この地で私達がウイスキー作りを続けてこられたのもこの豊かな自然が守られてきたからと言えるのではないでしょうか。私達はこれからもこの自然を守り続けていきます。