■水質調査の結果

1.水量…A、G、H地点の湧水量が大きく、H地点は石垣の積石の隙間から相当量の水が滲み出していました。由緒のある清水が現在も湧水を存続していました。

2.水温…2003年10月から2004年1月にかけての気温変動差は20.5℃だったにもかかわらずA、D、G、H地点は水温変動が少なく、各地点とも水源が地中深いと推察されます。中でもAについては一定水温に近い結果でした。

3.電気伝導度…F、G、I地点の値が大きく、他よりも不純物濃度が高いことが判ります。

4.pH…全体的に微アルカリ性です。全ての地点が水道水質基準の範囲内に収まりました。

5.陰イオン分析…測定項目は7種です。亜硝酸イオンと硝酸イオンについては水道水の水質の高さを示しますが、それ以外の項目を見るとA~K地点と水道水の質は大差ありませんでした。むしろトリハロメタン生成と関連の深い臭素イオンについては、水道水の値は他よりも劣りました。なおF、G地点以外は全てのイオン分析項目において水道水質基準範囲内でした。

6.過マンガン酸カリウム消費量…CODにかかわりの深い項目です。結果はA~K地点の全て「水道水質基準」の範囲内に収まるものの、「良好な水基準」推奨値と照らすとI、K地点は基準を超えます。E、I、K地点以外は水道水を上回る水質でした。

7.全有機炭素(TOC)…全ての地点で水質基準を満たし、A~K地点ではほぼ不検出でした。その一方で水道水が最も悪い結果となりました。

8.大腸菌群と一般最近群…A、B、D、H地点にて両項目ともに良い結果が得られました。なおC、F、I地点は採水不能となり、対象から外しました。

表1 2003年の水質測定結果
(数値は平均値。「水温の変動差」は測定結果の最高値と最低値の差/10月-1月)

表2 2005年の水質測定結果(大腸菌群と一般細菌/10月-1月)

■まとめ

今回ご紹介した水質測定結果は水道水質基準項目のごく一部ですが、実施項目に限ればA、B、D、H地点の水は飲用可能でした。水量のことを考えるとH→A→D地点の順に災害時にも有用です。現代生活に慣れ「水道水以外は飲めない」とする我々現代人の「常識」を超えて良好な水質を保っていました。とくにD、H地点は地元住民の認識を上回る水質でありました。調査中には嬉しくも「結果が分かったら教えてね」と近隣住民の方から幾度かお声掛けいただき、湧水に関心を持った人々に逢えました。しかし思い返すと関心を払って声掛けいただけたのは地域の古老ばかりでした。

また2003年からたった2年間で、調査対象地区の水環境状態も変化を受けていました。C地点は湧水量が減少し、F地点では暗渠化されていました。残念な結果です。湧水をはじめとして忘れられつつある井戸や水路など地域環境資産としての価値認識改善が求められるといえましょう。