■魅力再発見のスポット

宮沢橋下流右岸

太白区側の右岸堤防のすぐ下は寄州が広がり、そこには柳など自然に生えた木々が連なる緑の回廊になっています。その木々は野鳥の止まり木になっており、すぐ側で観察することができます。平地で野鳥を観察するなら双眼鏡でないと確認できませんが、ここでは堤防の路から肉眼で観察できます。その下の人が入れない草むらでは「キジ」の姿もよく見ることができます。

木流堀が広瀬川に流れ込む場所はいつも泡だっており、水質はお世辞にもきれいとは言えませんが、「コイ」や小魚が集まっています。その小魚を狙って「カワセミ」も飛んできます。警戒心が強く、人の気配を感じるとすぐに逃げてしまう鳥ですが、この場所で餌を獲る時はじっとしていることがあります。頭が大きく、お腹が橙色、頭から背中が青緑色で色彩がはっきりしている姿にファンは多く、この場所で散歩中の人々がよく立ち止まっています。

宮沢橋中洲

宮沢橋と愛宕堰との間にある大きな中州付近。ここには「アイガモ」(アヒルとマガモの交雑種)の家族が住んでいます。仲が良くいつも家族で一緒に行動している姿を見ることができます。この家族は当初5羽だったのですが、2年前に2羽の子が生まれ、平成18年7月にも2羽の雛が誕生し、現在9羽に増えています。地域の人々はこの家族を温かく見守っています。

キジ
カワセミ
アイガモの家族

宮沢橋下流左岸

宮沢河川敷では河原町側の堤防に沿って花壇が作られています。地区の人々が「サルビア」「コスモス」など季節の花や「ハマナス」や「バラ」の花を植え管理しています。この一画に江戸時代の3基のお墓が祀られています。墓石には「元禄」「享保」の年号が刻まれており、かなり古いものです。

実はこの墓石は、4、5年前に中州の先端の土砂を取り除いた際、川底から出てきたものの一部で、工事を行った方と花壇を管理している方が話し合い、近くの住職の立会いのもとここに祀ることになったということです。長い間冷たい水の中に放置されていたのですが、今は季節の花に囲まれ、ねんごろに供養されているのです。

愛宕山

愛宕山下の河川敷、この付近から上流は河岸段丘の崖が続いています。山で見られる木々や植物が多く、豊かな自然が残されています。下流とは異なる生態系になっており、見慣れない植物や虫達に出会います。この辺りの川はきれいで「カジカガエル」の鳴く声も多く聞くことができます。愛宕山の崖の間からは小さな滝が広瀬川に流れ込んでいます。

■都会のオアシス

広瀬橋から愛宕橋の間は堤防の路を通り、途中で河川敷に降りて散策しても2時間あれば一周できます。付近には地下鉄の愛宕橋駅、河原町駅、長町一丁目駅があり、交通は便利です。広瀬橋や宮沢橋から上流を眺めると遠くに泉ヶ岳などの山々、ビルの街、その下には河川敷の木々の緑と広瀬川が広がります。杜の都というと街のケヤキ並木をすぐに連想する方が多いかもしれませんが、私は広瀬川から見る景観が「杜の都仙台」の原風景だと思っています。

広瀬橋から上流の風景

大都市の市街地の真ん中を流れる広瀬川の自然はコンクリートジャングルの中で暮らす人々の心を癒してくれます。

■治水と自然環境の両立

川は蛇行し、淵があって瀬があって木陰があって魚を含めた水中生物が繁殖できています。中州や寄州では、そこに生えている木や草、そこに生息している鳥や虫などの生物達により、生態系のバランスが保たれています。もちろんそのような環境は人にとっても安心して暮らせるいい環境だと思います。

毎年、冬になると河川工事が行われますが、川を管理している行政は治水優先で残念ながら「自然環境」についてはあまり考慮されていません。河川工事が始まると「治水」と「自然環境」どっちが大切かと話題になりますが、いつも議論が先送りされています。「治水」と「自然環境」を両立させた広瀬川全体のビジョンづくりが必要だと思います。今年の冬も、中州での大規模な工事が予定されており、どのくらい環境に配慮して行うのか危惧するところです。

毎日、広瀬川に通い、今日は何を取り上げたらよいか迷っていると、まるで「自分を撮ってください」と言っているかのように動植物がカメラの前に現れ、シャッターが切れるまで、待っていてくれることもあります。広瀬川の自然の豊かさを感じさせられる一時です。

今まで撮り続づけた動植物の映像が「過去の貴重な映像」となってしまわないよう、これからもカメラを通して見守り続けて行きたいと思います。もの言わぬ動物や植物の代弁者として。