■川面に引き寄せられる少年たち

春の陽射しを受けて、広瀬川の川面がきらきらと輝いている。その流れを眺めながら、角五郎の川原を上流へさかのぼって歩いてみた。あらためて、どうして水の流れは人の気持ちをなぐさめるのだろう、と思う。石の上をなめらかにたゆたっていくのが心地よいのだろうか。それとも、生きものとして、川に何にも代えがたいかけがえのなさを感じるからなのだろうか。

牛越橋をくぐり、太いケヤキを茂らせる来迎寺の崖を右に河川敷をいくと、けっこういろんな人とすれ違う。犬の散歩の人、杖をついたおばあさん、買い物帰りの女性─誰もがこの上の車のうるさい通りより川のそばに心地よさを感じて歩いているようだ。

牛越橋の川原

河川敷には開放感があふれる。左手が来迎寺の崖

と、河川敷のまん中に自転車が4台、停めてあるのを見つけた。あたりに人はいない。耳をすますと、崖を隠すように茂る竹林の間から子どもの声がする。そおっと近づいてみると、男の子が4人、熱心に作業中だ。どうやら、これは秘密基地づくりらしい。

秘密基地を作るぞ

いい?と聞いて撮らせてもらった。向こうに抜けられる通路を建設中。

「何年生?」と聞いたら、「小学校卒業したんです。だから中学校の入学式まで完成させようと思って」と、一人の子が教えてくれた。「屋根もつけるの?」とたずねると「いや、そこまでは」と、はにかんでいる。いいなぁ。春休みの一日、友だちといるだけで楽しい年頃の川遊びの時間。

きっと手島さんも工藤さんもそうだったろう。橋を渡った写真の中の中学生たちも川で遊びに興じたはずだ。
川がそこにあれば、少年たちは集まってくる。そして戯れる。50年前も、いまも。そしてきっと50年後も。