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広瀬川散策エッセイ vol.4-2 早春の川に集う人々ー広瀬橋から千代大橋へ

フリーライター/西大立目祥子さん

船を浮かべ、畑を耕す

日辺に広がる畑

【日辺に広がる畑】左岸、日辺の河川敷に広がる広大な畑。春の農作業も間近い。広く光るのが川。

千代大橋に近づくと川幅はさらに大きくなる。千代大橋から下流に向かっては川沿いに土手が築かれ、その上を車が走っている。地名でいうと飯田いいだから日辺にっぺへと向かう道だ。右手には広大な河川敷が広がっていて、千代大橋の下は公園になっているものの、下流にいくと畑が目立ってくる。
小さな布きれをつなぎ合わせたような畑の間には、ポコポコと広さでいったら一畳もないような作業小屋がいくつも立つ。川の豊かさに抱かれるようにして集う人たちが思い思いにつくる畑と小屋の風景は、おだやかでのんびりしていて、どこかユーモラスだ。

合流して下流へ

【合流して下流へ】名取川と合流し、さらに500メートルほど下流へと流れたあたり。中州にもヨシがよく育っている。

この付近で広瀬川は名取川と合流する。そのようすを眺めたくて、土手から河川敷へと下り水辺に近づいてみたが、ヨシ原にはばまれてよくわからなかった。対岸からならわかるかと名取大橋の下も歩いて水辺を探ったが、こちらも背の高いヨシで河川敷は覆われ、水辺に近づくことすらできなかった。ヨシの間には、背の高い樹木も育っている。そして、ところどころ水をかぶった跡のように、木もヨシもなぎ倒されているのに気づいた。

種まきの準備

【種まきの準備】そろそろ種まき、と話を聞かせてくれた人。後の小屋からはときおり笑い声が聞こえてきた。

合流地点から500メートルほど下流で、小さな畑に熱心にクワを入れる男性がいた。「そろそろ種まきの準備ですよ。この畑、日辺の人から借りてるんです。公務員退職して10年、やっぱり何か趣味がないとね。2,3年前からいいのが収穫できるようになってきましたよ。毎日はこれないけど、かなりきてます。ここはほんとにのんびりしていい」。

係留される船

【係留される船】このあたりになると海の影響も強くなる。引き潮のときに、海に出ると、川に戻ってこれないときもあるという。

見ると、川岸には数隻の船が係留されている。「船?船をやってるのはあの人たち」と指さした先には、ビニールハウスの小屋があり、男性の笑い声がもれてくる。屋根の上にはにょっきりと煙突が突き出している。こんにちは、と入り込むと、中高年男性が3人、歓談中だった。「船が好きな連中が中心になってサークルつくってんのね。もちろん漁業権はあるよ。アサリとったり、ハゼだのカレイだの釣ったり、あとは畑もやって。みんな仕事してるから毎日は無理だけど、ここはいいんだよ。夏は浜風が通るから昼寝に最高だし。みんな家族連れてくる秋の芋煮会もすごいしな。ストーブ焚けばあったかいから元旦からだって誰かいるよ。ハッハッハ」。元祖アウトドア派、川辺はそんな男たちの社交場かもしれない。よく日焼けして機嫌よく話す表情を見ていたら、子どものときのまんまで川で遊んでいるのだろうかと、こちらまで愉快な気分になってきた。

土手の上から 

【土手の上から】千代大橋の向こうに、仙台の街並みを望む。高層ビルもいつのまにか増えていた。

取材の翌日、あるフォーラムで全国を歩き回る女性プランナーと話す機会があった。その人は確信に満ちた表情でこういった。「私ね、いろんなところに行くけれど、いいまちには必ずいい川があるって思うの」。そして、そこには川を思い、川で遊び、川に集う人たちがいるのだろう。仙台はそうしたまちのひとつに違いない。
土手に上がると、川のぽーんと開かれた空間が180度の視界で迫ってきた。ぎちぎちと隙間なくビルや住宅が立ち並ぶ都市の中にあって、広々とした空間や水辺がどれほどのなぐさめを住む人に与えてくれているか。そのことにあらためて感じ入った。

 

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