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私の広瀬川インタビュー 第16回 川島隆太さん

平成22年6月25日(金)13:00〜14:00
場所:東北大学加齢医学研究所川島研究室
聞き手:佐藤幸輝(仙台市建設局広瀬川創生室)

 

メイン写真

 

いまや全国的に子供から高齢者までもが取組む「脳トレ」、その仕掛人としてお茶の間でも著名な東北大学の川島先生に、広瀬川をはじめとする豊かな自然環境に恵まれた仙台の魅力と、そうした環境を活かした子育てなどについてたっぷりと語っていただきました。子育て中のお父さんお母さん必見のインタビューです。

第1回 青葉城恋唄がきっかけで仙台へ 2010.7.28
第2回 ハードでタフな芋煮会の思い出 2010.7.29
第3回 IT化社会だからこそ、自然体験が必要です 2010.7.30
第4回 子供にとっての本当の意味での「遊び」が大切 2010.7.31
第5回 規則正しい生活習慣をもっと定着させたい 2010.8.01
第6回 地域との連携を成功させるために 2010.8.02
第7回 川島先生からのメッセージ 2010.8.03



3.IT化社会だからこそ,自然体験が必要です
●聞き手

川島先生というと、まず脳を鍛える「脳トレ」を皆さんイメージされると思います。「読み・書き・計算」の脳への有効性については全国的にも広く普及してきていると思いますが、その仕掛け人として、現在の状況をどのようにお考えでしょうか。

●川島さん

実は「脳トレ」の海外展開も始動しています。

●聞き手

国内はすでに普及した、と。

●川島さん

まだ普及している最中だと思いますが、だいぶ全国にも行き渡ってきています。

川島さん

●聞き手

これだけ多くの方が「脳」について関心を持つようになったのはどうしてでしょうか。

●川島さん

いくつかあると思いますが、一つは、90年代に養老孟司さん、立花隆さんたちが、脳について優しく一般に話すことを始められ、そうしたいわば啓蒙教育が行き渡ってきた。その一方で、バブル崩壊という時代背景もあって、物質的な豊かさというものに人々の気持ちが向かなくなった。次に人々が何を求めたかというと、自分の内面、心の問題だった。そこに立花さんや養老さんの活動で、どうやら心というのが脳に関係ありそうだと、多くの人が漠然とした意識を持った。ものの豊かさが得られないならば、心の豊かさを求める。その心の豊かさとは何だろう、ということになって、脳が元気であることが大事だと皆さんが気づいたのだと思います。

●聞き手

そうした背景があり、一方で先生が研究されている脳と心を解明するような分野で研究がどんどん進んできた。

●川島さん

すべてタイミングだと思っています。私たちの研究が10年早かったら、これだけ受け入れられなかったかもしれません。

IT化社会だからこそ、自然体験が必要です

●聞き手

脳とITとの関わりについて伺いたいのですが、これまでの研究で、読み書き計算、あとそろばんなどの有効性や、規則正しい生活習慣や家族とのコミュニケーションなども脳機能上では大変重要だと先生はおっしゃっています。ですが、現代ではIT機器の普及によって、それと対照的な生活スタイルへと変わってきています。先生は著作で、みんながITを使うことで本当に幸せになれるのかという疑義も述べられていますが、これまでの研究でわかってきているITと脳の関係について教えてください。

●川島さん

まず、IT機器を使っている時には、脳は働きづらいということが分かっています。明らかに脳は現実環境と、IT機器を通して得られるバーチャルな環境というのを分けて認識しています。例えば自然体験でも、実際にその場で体験しなければ脳は働かない。ITを通してどんなに素晴らしい立体映像装置で再現されようと、脳は冷静にこれは写真だと認識し、結果としてあまり働かない。ですから、子供たちの情操教育に与える影響を考えると、IT機器を介して楽に便利で様々な環境を与えられる、と思ったら大間違いだということが言えると思います。

脳(前頭前野)の活動状況
 脳(前頭前野)の活動状況(提供 東北大学加齢医学研究所)
(図中の白色部分を基準値とし、青の色合いは基準値以下の活性化度合い、赤の色合いが強いほど脳が活性化していることを示す)
 【左の図】パソコンで入力しているとき  【右の図】手書きしている時

●聞き手

そうした脳の働きと反比例する形で、例えばテレビは現在3D化を打ち出しているように、社会全体がITをどんどん使って仮想現実を作り出すような方向に動いているような気もします。IT機器はより良いコミュニケーション実現のためなどに開発されたはずなのに、脳科学的見地からの理想とは異なってしまうという現実があるのではないでしょうか。

●川島さん

おそらくマスメディアとメーカーが作り上げた幻想の中に人々が泳がされているだけではないでしょうか。バーチャルな体験を求めるならば、外に出て体験すればいい。そんな面倒なことよりも、仮想現実として家の中で体験できた方が良い、という間違った価値観を、そうした装置を売り込みたい人たちと、新しいことを煽ることで注目されようとするマスメディアの人たちのタッグによって生み出された幻想の中に人々がいるのではないでしょうか。

●聞き手

好むと好まざると今後も社会のIT化は進むと思いますが、こうした中で私たちがしっかり認識しておかなければならないことは何でしょうか。

●川島さん

IT化が進む社会だからこそ、子供たちの自然体験の機会をきちんと確保することを、家庭や地域社会が意識して取組まなくてはいけないと思います。ここに国立青少年教育振興機構が千葉大学教育学部の先生方と一緒に行った調査の資料があります。( 独立行政法人国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実体に関する調査研究」中間報告
 子供の頃の体験が、その後の人間形成にどのような影響を与えるのかということを調査しており、この中間報告書では、子供の頃の体験が豊富な大人ほど、やる気や生きがいを持っている人が多いという結果がでています。調査項目には「自然体験」もあり、子供の頃に自然体験をしてきた人たちは、大人になっても意欲が高い人になっています。

●聞き手

すでにこうした調査がされているんですね。

●川島さん

ごく最近公表されたものです。この調査において、意欲の高い大人につながる子供の体験として、自然体験があげられていますが、私は海や川などで自然と触れ合うことが、カギだと思います。子供の頃に自然と触れ合う体験は、コミュニケーション能力を育むことに関係すると思いますが、この調査結果では小学校高学年や中学生においても自然体験が影響しているという結果がでています。ですから、仙台では街の中を流れる広瀬川など、自然が身近な環境にあるので、小中学校の子供を持つ方々は、家でパソコンやテレビを見ている時間があるなら、天気の良い休日などには、海や山や川へどんどん出かけてもらいたいと思います。そこでの体験が、将来子供が大人になったときに影響してくるので、IT化社会の今だからこそ、意識してやっていかなければいけない。

<参考>広瀬川(愛子地区)での水遊び
  <参考>広瀬川(愛子地区)での水遊び

明日に続きます。
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